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かんとこうブログ

2022.07.21

融点28℃の特殊物質とは何か?

 

先日テレビのCMで28℃を保つ不思議なネッククーラー(首まわりの冷却帯)というのを見ました。複数の商品が存在しているようですが、今日はその商品の鍵を握る「融点28℃の物質」についてご紹介します。

「融点28℃の物質」の説明の前に、この商品(ネッククーラー)についてご紹介します。

鍵となる物質が出てきました。PCM(Phase Change Material)という名前が付けられていますが、簡単に言えば融点が28℃である物質を指しています。融点が氷に比べて高いので、使用前の冷却時間は氷よりも随分短くて済むようです。

そこで肝心の中身なのですが「オクタデカン」と判明しました。そうです。ただの炭化水素で、化学式で書けば「C18H38」です。ちょっと意外でした。

ところでこのアルカンの融点は面白い性質があります。炭化水素の融点と沸点をWikipediaから引用して図示します。

左がアルカン(飽和炭化水素)の炭素数と融点、右が炭素数と沸点です。左の図に赤い矢印が示すのが炭素数18の融点で28℃です。と、ここで説明は終わりになるのですが、実はこのアルカンの融点については、前から気になっていたことがありました。それは赤の点線で囲ったアルカンの融点が炭素数の増加とともにジグザグに上昇していくことです。アルカンの融点の奇偶性(奇数と偶数で異なる性質)はかなり有名な現象なのですが、恥ずかしながら理由までは知りませんでしたので調べてみました。

X線回折により構造を分析すると偶数のアルカンは奇数のアルカンよりも構造が密であり、それだけしっかりとパッキングされているため融点が高めになる」とこれが最も短い説明であり、実はこれ以上の詳しい説明は見つけられませんでした。

そうかもしれないと私が思った説明としては「奇数の場合末端のメチル基の方向が同じ向きであるのに対し、偶数の場合にはメチル基の方向が異なる向きであるため、パッキングのしやすさが異なる」というのがあります。確かに末端基が嵩高くなると明らかに奇偶性が発現するという文献も複数見つかりましたので、メチル基の方向性というのもアルカンの融点の奇偶性の理由の一つになりえるとは思われます。

6月の猛暑から一転して梅雨に戻ったような天気が続きましたが、そろそろそれも終わり本格的な夏がやってきます。オクタデカンを利用したネッククーラーで首回りを冷やして少しでも暑さをやわらげるのもよいかもしれません。

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