かんとこうブログ
2022.11.15
日本ペイントHDの2022年第3四半期決算
昨日夕方に、日本ペイントホールディングスの2022年第3四半期の決算発表がウエビナー方式で行われました。生憎聞くことができませんでしたが、事前に詳細な説明資料が公開されていましたので、その内容からかいつまんでご紹介させてもらいます。同社の発表資料は、短信ベースと実績ベースにわけて数字が提供されていますので、まずは、短信ベースと実績ベース、主要セグメントの業績、全社の事業分野別業績についてご紹介することにします。
https://www.nipponpaint-holdings.com/ir/assets/files/name/20221114ir02_j.pdf
8月の第2四半期終了時点の発表では、営業利益の前年同期比がマイナスの箇所が多く存在していましたが、第3四半期は全般に好況であり、特別な事情のある一部を除きそうした箇所がすべて消えました。驚異的な回復状況です。
左下のグラフに第3四半期と累積における事業分野別の業績を示していますが、中国の工業用の不振によって工業用が昨年の売上収益を下回っている以外は汎用、自動車は順調に回復を見せ、前年度を上回っています。
短信ベースと実質ベースの差異については、下記にコメントされているように、売上収益、営業利益ともM&Aによる獲得したCromology社や社の新規連結効果と為替の影響としています。また事業収入別のコメントとしては、自動車用については昨年度の落ち込みからの反動増が、また営業利益の回復については製品値上げの浸透による増収効果が挙げられています。
各事業分野の第3四半期における市場の需要動向については下図で説明がされています。
第3四半期は世界的に自動車が前年の落ち込みからの反動増があったこと、そして第4四半期についても日本は好況が期待されるとしています。反面、建築は中国のプロジェクトが第3第4四半期とも軟調であり、第4半期では中国のDIYも軟調と予測されています。
汎用、自動車用、工業用の主要地区の売上収益の前年との比較を下に示します。
汎用はすべての地区で、第3四半期と累積とも前年を上回っています。自動車については第3四半期が好況であったものの、日本の累積はまだ前年を下回っています。ただし、これは第4四半期に挽回できるものと思われます。工業用は中国の不振が第3四半期でも回復せず、累積も前年割れです。はたして第4四半期でも挽回できるか微妙なところでしょう。
決算とは直接関係ないのですが、各地域セグメント、の2018年からの事業分野別収益が掲載されていましたので、日本国内の自動車用、汎用(建築、防食)、工業用の3分野について売上収益の推移をグラフにしてみました。
ちょっと見にくいかもしれませんが、目を凝らしてみると、汎用はほぼ売上収益がコロナ前に戻っていることがわかります。工業用もほぼほぼコロナ前に戻っていると言って良いと思います。ただし自動車用については、現在でもコロナ前に戻っているとはいいがたい状況にあります。これは原材料費高騰により製品値上げがなされているという条件での売上収益の推移ですので、数量的にはコロナ前には戻っていないと見るべきだと思います。日本国内の状況はまだ厳しいようです。
最後に、どうしても気になるTOP3との比較をご紹介します。
TOP3のうちPPGとAkzoNobelが第3四半期、累積とも増収減益であることは以前にご紹介しました。TOP3の中ではSherwin-Williamsだけが第3四半期、累積とも増収増益でした。こうしたTOP3表に日本ペイントHDの短信ベースを並べて書いて見ると、実に堂々たる増収増益であり、しかも前年比%では群を抜いていることがわかります。背景にはもちろん積極的なM&Aがあるにせよ、勢いが違います。(下左図)
一方で右のグラフでは、第3四半期終了時点の売上とEBITDA(PPGのみ税引前利益)をすべてドルに換算して比べてみました。淡々と見て、日本ペイントHDはもはや実質的にAkzoNobelにおいついたと言ってもよいのではないかと思います。それこそ為替によって順位が逆転するくらいのところまで来ているように思います。またこのグラフはこの4社の営業利益率がほぼ同じレベルであるということも示しており、なかなか興味深いと思っています。
この第4四半期でどこまでAkzoNobelに迫れるか?個人的にはとても興味があります。n