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かんとこうブログ

2022.12.13

近赤外光免疫療法について

先日テレビで光免疫療法が紹介されていました。これまでのがんの治療法に比べてより効果的でありながら、がん細胞以外の組織への影響が少なく、体の免疫力を活性化できるという画期的な方法のようです。調べてみるとこの治療法の作用機序が、塗料屋の目からみてかなり興味深いものでしたので、今日はこの光免疫療法についてご紹介したいと思います。今日の内容・図は、関西医科大学 光免疫療法研究所のサイト(下記URL)から引用させていただいています。

https://www.kmu.ac.jp/research/pit/commentary/index.html 

この治療法は2日間にわたり行われます。まず光に反応する薬剤(光免疫療法薬)を点滴で投与します。この薬剤は1日程度でがん細胞表面の受容体に取りつきますので、そこへレーザーを照射してがん細胞を破壊します。破壊されたがん細胞からは、がん抗原となるがん細胞が放出され、このがんに対する免疫が活性化されます。(下図参照)

  

  

ここで使用される光免疫療法薬は、二つの物質の複合体です。ひとつはがん細胞の受容体に取りつくたんぱく質(抗体)であり、もう一つは光に反応して化学反応を起こす物質です。この薬ががん細胞に取りついてそこへレーザー光(近赤外線)を照射したときの作用を表したのが下図です。

  

  

TMはがん細胞、Abはがん細胞表面の受容体(Receptor)に取りつく抗体(Anti-body)、Abから突き出ている黒い線と赤い丸などは光に反応して化学反応を起こす物質です。この光に反応して化学反応を起こす物質とは、水溶性の色素でIR700と呼ばれるもので下記の構造をしています。

  

  

この構造を見て緑の顔料であるフタロシアニン銅を思い出した塗料関係者も多いのではないでしょうか?中心のSiがCuに置き換わればフタロシアニン銅になります。それはともかく、ここで大事なのはSiから伸びている先端が枝分かれした大きな置換基部分であり、レーザー光(近赤外光)があたると大きな置換基が脱離します。この色素が水溶性であるのはこの大きな枝分かれした置換基のおかげですので、この置換基が失われることで水溶性も失われます。するとこの複合体またはがん細胞受容体と複合体が不溶性凝集体となって溶解性が大きく変化し、その物理的ストレスから細胞が傷害され、大量の水が細胞内に侵入して最終的に細胞が破壊されます。

急激な膨潤によって細胞膜に大きな裂け目が生じ、細胞質内の内容物が細胞外に放出されるといったことがさまざまな方法で確認されており、その過程のイメージが下図のように示されています。

  

  

①光免疫療法薬ががん細胞表面の受容体に取りつく ②近赤外光により光免疫療法薬の水溶性部分が化学反応によって脱離 ③受容体付近の溶解性が大きく変化することによる物理的ストレスにより細胞膜が損傷し水が浸入 ④大量の水の侵入によって細胞が破壊され、細胞の一部が外に放出されることにより周囲の免疫細胞を活性化 という過程を取ることが説明されています。

  

このあとにおこる免疫力の活性化についても詳細な説明がされているのですが、塗料屋の興味を刺激するのはあくまでこのがん細胞破壊のプロセスなのです。光をあてることで大きく水溶性が変化し、それが物理的なストレスを与えて細胞が破壊されるという、このプロセスです。塗料屋としては、このようなことを聞くと、それを塗膜を剥離させることに使えないかなどと思ってしまいます。 塗膜表面に残存する官能基と結合可能な光反応性分子を送り込んでおき、あとから光照射すると溶解性が大きく変わることで塗膜に亀裂がはいり、そこから水が侵入して塗膜が剥離する、なんてことができないかなどと考えてしまうということなのです。

  

こうした妄想はともかく、この光免疫療法、大変に優れた治療法であるように感じます。応用範囲も広く、がん細胞表面の受容体にとりつく抗体さえあれば適用可能であるとのことでした。下図に示した多くの種類のがんへの適用が期待されているそうです。

  

  

この光免疫療法の実用化がさらに進展することを期待するとともに、この技術をなんとか塗料分野に応用できないものかと妄想老人は思うのでした。

  

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