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かんとこうブログ

2023.04.03

日本の塗料工業2023の中から・・日産フェアレディZ IKAZUCHI-雷-YELLOW

先週、日本塗料工業会より「日本の塗料工業2023」が発行されました。この「日本の塗料工業2023」は、文字通り日本の塗料工業の概要をあますところなくかつ簡潔に紹介している冊子であり、これ一冊あれば日本の塗料工業の歴史をはじめとして、生産数量や金額などの統計資料はもちろん、塗料の製造方法や塗装方法の概略など塗料工業の概要を十分に理解することができます。

そうした掲載内容の中で最も注目を集めるのが発行前年の代表的な塗装物であり、各分野から選ばれた塗装例が紹介されています。自動車は塗料の需要分野としては建築物に次いで2番目に大きな需要分野ですが、その代表として、例年優れた塗装に対して与えられる「オートカラーアウオード」受賞車が掲載されており、2023年版には受賞車のひとつである「フェアレディZ IKAZUCHI-雷-YELLOW」が紹介されていました。思わず息を飲むような美しいイエロー・・今日はこのIKAZUCHI-雷-YELLOWについてご紹介します。とにかく印象的な美しい黄色です。日産のホームページ(下記URL)から写真を引用させてもらいました。

https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/z/exterior.html 

今回用意されている色は全部で9種類のようですが、そのうち6種類がバイカラーでルーフ部分に黒が使われているようです。イカズチイエローについては、3Pと表現されており、これは3コートパールであると書かれていました。

この美しいイエローの塗膜の構成がどうなっているのか、塗料屋としては気になるところですが、それについては同じくホームページに図解されていました。

この図から発色を担当しているのは中塗りと第1、第2ベースの3層であることがわかります。中塗りの役目は紫外線吸収と書かれているのですが、図では黄色いフレーク状物質の表面で反射しており、普通に考えると着色アルミのフレークを使用し、ここまで入り込んでくる紫外線を電着塗膜層に到達しないよう反射させているのではないかと想像します。ただし、吸収層という表現が正しいとすれば、さらに紫外線を吸収するようなものが含まれているのかもしれません。

第1ベースの役割は彩度表現と書かれており、黄色い粒子が書かれていますので、普通に考えれば、ここに含まれている高彩度イエロー顔料が鮮やかな黄色を発色しているものと思われます。第2ベースはパール表現層と書かれていますので、ゴールドに輝く人工パールが含まれて真珠様の複雑な輝きを放っているものと思われます。このパールについては、「ゴールドに輝く」とわざわざ断っているので、マイカなどのフレーク材料の表面を精密にコントロールした厚さで二酸化チタンをコーティングしたものではなく、二酸化チタンのかわりに酸化鉄でコーティングしたものではないかと想像しています。

ところで、フェアレディZのイエローですが、これは代々のフェアレディZで使用されていたようで、日産のホームページに2代目、4代目のフェアレディZイエローの写真が掲載されていました。今回の新しいフェアレディZは7代目になるそうです。

https://www2.nissan.co.jp/SP/Z/MAILARCHIVE/03/

       

このフェアレディZのイエローについては、「日経XTREND」に面白い記事(下記URL)があったのですが、残念ながら有料記事なので、さわりの無料部分だけを引用してご紹介するにとどめます。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00370/00006/ 

  

「歴代モデルのカラーに関する年表のような資料を作成して分かったのが、同じイエローでも、モデルごとに、その時々の最新技術を駆使し、発色を追い求めてきたということだ。例えば、初代S30のサンシャイン・イエローは、同時代の他社モデルにも近似したカラーが使われていたことから、それが当時の技術による発色の限界と推察した。S30にはその後、ライムグリーンに近いイエローや赤みに寄せたイエローなど、3色のイエローが存在した。4代目「Z32」のイエローは、パール感を強調したカラーリングだったという。」(引用終わり)

   

これを読む限り、フェアレディはその時代その時代の最新技術を用いて発色を追い求めてきたということであり、そうした意味では、塗料に関わるものとして塗膜構成の詳細内容には大変興味があります。

   

今回のカラーラインナップでは、もう1色注目されている色にセイラン(青嵐)ブルーがあります。イカズチイエローと同様に塗膜構成を引用して示します。

発色を担当するのは第1ベースと第2ベースで第1ベースでは大粒子径アルミをきちんと配向させ、第2ベースではカラーアルミを用いて彩度を向上させたとしています。図を見ると青の着色顔料は第1ベースと第2ベースの両方に含まれていますが量的には第1ベースにより多くの青顔料が含まれているようです。第2ベースには高強度樹脂が含まれていると書かれていますが、これが発色にどのような影響を与えているのか、それとも透明クリヤーの自己修復性と関係しているのかというあたりは、自動車用塗料の経験が乏しい私ではわかりません。

ここ最近、自動車の色がとてもきれいになっていると感じています。それは各社の努力と工夫の賜物であると思われまますので、是非積極的な技術的な情報発信をしてアピールしてほしいと思っております。

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