かんとこうブログ
2023.04.07
世界の人口はやがて減少に転じる!
昨年、世界の人口が80億に達したと報じられ話題になりました。このままいくと世界の人口は増加を続けやがて気候変動問題と相まって食糧危機に直面するのではないかと漠然と思っていました。ところが2022年の国連統計によると、世界の人口は21世紀後半に減少に転じる可能性が高いと予測されていることがわかりました。これからも世界の人口はずっと増え続けるという漠然とした思いは、どうも間違っていたようです。今日はこの話題をご紹介したいと思います。
今日ご紹介するデータは国連の経済社会理事会、人口開発委員会による「世界人口予測2022」(下記URL)のデータの転載です。
https://population.un.org/wpp/Graphs/DemographicProfiles/Line/900
まずは世界人口の推移からご紹介したいと思います。
左図が世界人口の推移、右図がその年代別内訳です。中央の縦線が2022年を示しています。未来における実線は予測の中央値で着色部分は予測の95%信頼限界区間(この範囲に入る確率が95%)です。中央値は21世紀後半に世界の総人口が減少に転じると予測しています。ただし、95%の信頼限界区間には、21世紀末でもまだ上昇する可能性も含まれていますので、今世紀中に人口が減少に転じるかどうかはまだ確定というわけではありません。
右図では今後増えていく年代としては、25-64歳の壮年層と65歳以上の老齢層であるとしています。ただし、25-64歳の年齢層は21世紀後半では減少に転じることとなり、21世紀末でも増加するのは65歳以上の老齢層のみとなります。こうした年代別の推移はどういったことを示しているのでしょうか?出生や死亡どいった直接人口の推移に関わるデータの推移を見ていきたいと思います。
左図が人口の年間変化率%、右図が出生率と死亡率です。今後人口増加率は次第に減少し、21世紀末にはマイナスに転じるという予想です。当然ですが、人口が減少するのは人口増加率がマイナスになるということです。
その原因は右図を見るとわかります。これから先、死亡率はどんどん増加し、反対に出生率は次第に減少します。その結果、死亡率が出生率を上回り人口が減少に転じるということです。また、死亡率のグラフをみると実は現時点が史上最も死亡率が低い時代であることには驚きを覚えます。そして2022年を示す線の右隣にある小さな突起がこれまでのコロナ禍による死亡者増であるとわかり、コロナ禍の影響の大きさに今更ながら驚きます。
次に率ではなく、実際の数で死亡と誕生の推移を見ていきます。
左図が実際の出生数と死亡数、右図が出生数と死亡数の差を計算したものです。さきほどの出生率と死亡率のグラフによく似たグラフになりますが、実数だけにより直接的に人口推移と直結しています。右図は出生数から死亡数を引いたものですが、これは世界の人口の各年の増減そのものになります。重複をいとわず解説すれば、コロナ禍で人口増加は大きく減少し、以降これからは人口増加がどんどんと減速し、21世紀後半に人口が減少に転じるということになします。
人口の増減に直接関係するのは出生と死亡ですが、それ以外にも重要な指数がありますのでそれをご紹介します。
左図が女性の生涯出産数、右図が出生時の平均余命(平均寿命)です。女性の生涯出産数は、男女比が1:1であれば2.0を超えると人口増加、2.0より小さいと人口減少となりますが、これも先ほどからご紹介している出生率、出生数の減少と連動して減少し、21世紀後半に2.0を下回ります。
右図の出生時の平均余命はコロナ禍で少し短くなったものの、これ以降は伸びていくという予想であり21世紀末には今よりは約10年延びると予測されています。
以上、これからの人口を予測した結果をまとめると以下のようになります。
①世界の人口は今後も増加を続けるが21世紀末には減少に転じる可能性が高い ②年代別に見るとしばらくの間はすべての年代で増加するが、児童層、若年層、壮年層の順に減少に転じる。老齢層については21世紀末まで増加が続く③その結果として、出産数(出生数)が低下し、死亡数が上昇にする。④出生数が減少するのは、出産可能な年代の女性の数が減少するだけでなく、女性ひとりあたりの出産数が減少するためと見られている。⑤平均寿命はこれからも延びていくが、死亡数を抑制するほどではない。
日本でも最近「異次元の少子化対策」が打ち出されて、人口減少に歯止めをかけようとしていますが、世界全体も長期的には少子化対策が必要になるものと思われます。