かんとこうブログ
2023.05.12
消費者動向調査VS景気ウオッチャー調査
本ブログでたびたびご紹介している消費動向調査と景気ウオッチャー調査について2023年4月の結果をご紹介したいと思います。これら二つの調査は同じ内閣府の調査ですが、調査対象が異なるため、いつも結果に乖離があります。4月の結果については、以下のようにまとめられていました。
ともに前月から上昇していますが、指数値(DI:計算方法は後述)が景気ウオッチャーが54.6であるのに対し、消費動向調査が35.4と20ポイントの差があります。この違いがどこから来るかというともっぱら調査対象者の構成であると思われます。
景気ウオッチャーの方は、「経済活動を敏感に反映する現象を観察できる職種から選定したひと」であり、消費動向調査の方は、「全国の世帯から三段抽出により選ばれた世帯」となっています。つまり、景気ウオッチャーは「ものを提供する側の人」が対象であり、消費者動向の方は「ものを購入する側の人」が対象であるという理解をしています。
設問については、基本的に「よい」「やや良い」「ふつう」「やや悪い」「悪い」の5択で、「よい」に1.0、「やや良い」に0.75、「ふつう」に0.5、「やや悪い」に0.25、「悪い」に0を掛けた数値の平均値の%をDI値(Diffusion Index)としています。
4月の調査結果をみてみましょう。
景気ウオッチャーと消費動向調査では表示されているグラフの期間が異なるため、両者の期間が同じになるように表示しています。グラフの形としてはよく似ているように見えますが、仔細に見ると相違点がいくつかあります。最も大きな相違点は平時の平均的レベルです。景気ウオッチャーが50であるのに対し、消費動向では40~45の間にあります。二つ目は現在(2023年4月)のポジションです。景気ウオッチャーが好況であった2018年の水準を上回っているのに対し、消費動向では、20018年の水準から10ポイントも下にあります。すなわち景気ウオッチャーでは「コロナ前に戻った」のに、消費動向では「まだまだ全然コロナ前には戻らなっていない」ということになります。この背景には、供給側と購入側という立場の違いの他に、この間の物価高騰も影響しているのではないかと推測しています。
それぞれの調査結果をもう少し詳しく見ていきましょう。まず景気ウオッチャー調査結果です。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2023/0511watcher/bassui.html
景気ウオッチャー調査における分野別では、家計動向関連でDIの数値が高いのが飲食、サービスで低いのが住宅です。企業で製造業よりも非製造業が高く、雇用も悪くありません。次に消費動向調査です。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun.pdf
消費動向では、コロナ期間中に非常に低い数値だった雇用環境が最も高い数値になりました。逆に最も低いのは耐久消費財の買い時判断で、これこそ物価高騰の影響がでていると思われます。資産価値もこのところの株高を反映して上がってきています。収入については、大企業を中心に大幅賃上げがされたようですが、その影響は数字にはあまり現れていません。
それぞれの調査は異なる機関で実施されており、お互いに言及することはありませんが、できれば両者を統括して経済の動向を解説してもらえないものかと思っています。