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かんとこうブログ

2023.05.30

塗料単価は40年間ほとんど上がっていなかったという事実

先週金曜日に塗料使用量(出荷量)が毎年22000トンずつ減少している事実というのを書きました。その際にもう一つ衝撃的なことに気が付きました。塗料の単価が40年間ほとんど上がっていないということです。今日は先週と同じく経産省のデータを使用して塗料出荷時の単価についてデータをご紹介します。データ元は、日本塗料工業会のホームページの統計資料中の経産省確報データ年度別で1978年度(昭和53年度)から2022年度(令和4年度)までのデータを使っています。まずは塗料全体の生産数量と塗料単価の推移をご覧ください。

上が数量の推移、下が単価の推移で、赤三角がバブル期を、青三角がリーマンショックを、緑三角がコロナ禍をそれぞれ表しています。図中に記入していますように、単価は昭和53年の369円から40年後の令和2年の398円までの間に29円しか上がっていません。毎年70銭ほどしか上がらなかったことになります。しかも変動幅がすくなく物価の優等生ともいうべき推移になっています。一方でこの間原材料価格に大きな影響を与える原油価格は大きく変動しています。下図がMIX原油価格(US$/バーレル)の推移です。

最安値の10$台から最高値の100$超まで大きな変動があったことがわかります。塗料業界がいかにつつましやかなのかを理解していただけるのではないかと思います。

しかし、全体としてはほとんど単価が上がっていないにしても、塗料の種類ではどうなのか疑問が残ります。そこで主要な塗料品目について、その出荷数量と単価を調べてみました。途中で経産省の調査区分が変更になったりして全期間のデータが揃いませんが、それでも傾向は充分わかるのではないかと思います。3品目ずつご紹介します。上が出荷数量で下が単価です。特に断りのない品目は1978~2022年の推移です。

この3品目は伝統的とも言える塗料です。いずれも数量が継続して減少しています。油性塗料はあまりの激減ぶりに途中で調査対象から外されてその他塗料に組み入れられました。しかしながら調合ペイント、アミノアルキド樹脂塗料両方ともしっかりと価格は上昇しています。使用量が減少すれば生産スケールが縮小し、生産コストがあがりますので、そうした要因があるのかもしれません。またこれらの品目は数量的にも単価的にもリーマンショックやコロナ禍の影響を受けていないように見えます。

アクリル樹脂塗料(焼付/常乾)とウレタン樹脂塗料ですが、アクリル樹脂塗料の数量が減少しているのは意外でした。おそらく工業用分野では最も広く使用されているものと思っていましたので、これだけ減少がつづいていることには驚きました。しかし、アクリル樹脂塗料の単価、特に常乾タイプは、上昇を続けています。出荷量の減少=単価の下降ではないのです。

一方ウレタン樹脂塗料は、数量も単価も全体的には上昇傾向にあり、幅広く使用されるようになってきたことがよくわかります。ただし。リーマンショック以降出荷数量が頭打ちになっています。

水系と粉体塗料です。数量はさすがにすべて増加傾向にありますが、単価の方はエマルションこそ上昇傾向が継続していますが、水性や粉体は必ずしも上昇ではなく、粉体ではむしろ最近まで下降傾向でした。

最後にエポキシ樹脂塗料、トラフィックペイント、シンナーです。エポキシ樹脂塗料は意外にも、この10年以上数量が減少傾向です。単価はほぼ横ばいで変化がありません。トラフィックペイントの単価は驚異的に低く、よく商売ができるものだと感心しますが最近までは数量、単価とも下降傾向でした。シンナーは、数量で言えば最大の品目で、全体の約25~30%がシンナーで占められています。この対象期間においては、つい最近まで昭和50年代よりも低い価格が続いていました。

ここまで説明の中で、図中の赤丸に触れませんでしたが、これはリーマンショックにおける影響が認められると思われる場合に赤丸を付けています。リーマンショックの影響について考察していただく際の参考にしていただければ幸いです。ここでは自説を述べることを差し控えます。

こうして見てくると数量も増え、単価を上昇している塗料品目は、ウレタン樹脂塗料とエマルション塗料くらいしかないようです。しかし、数量が減少傾向でも単価は下がらない塗料もかなりあることもわかりました。この2年ほどの原料高騰による塗料製品の値上げについては今回触れていませんが、40年間ほとんど動かなかった単価が大きく動き始めたことは上のグラフのいずれをみても明らかです。今後とも毎月の経産省確報データから品目別単価の推移に注目していきます。

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