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かんとこうブログ

2023.06.26

またしても男女格差は政治格差 Gender Gap Report2023

世界経済フォーラムからGender Gap Report2023が発表されました。マスコミでも報道されていましたが、日本は昨年から9つランクを落とし146か国中125位となんとも情けない順位となりました。この理由は政治に対する女性の参画が少ないためだと簡単に説明しているようですが、もう少し詳しく知りたいと思い、フルレポートを調べてみました。どういう項目でどのような評価をされているのかを詳しくご紹介したいと思います。フルレポート(英文)は下記URLから読むことができます。

htps://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2023.pdf 

   

G7と比較的日本にもなじみの深い国を選んで評価項目ご毎のスコアを調べた結果が上表です。4つの評価項目のスコアを単純平均したのが総合スコアとなり、最終的な順位はこの総合スコアで決まります。この4つの評価項目ごとのスコアを下図に示します。

   

  

4つの評価項目のうち、「就学」と「健康・寿命」はほとんどの国のスコアが満点に近く、各国間の差がほとんどありません。一方で「経済的参画・機会」「政治権限」については、各国環の差が大きく、かつ日本はこの2項目で大きく後れをとっていることがわかります。特に政治権限については、0.057というスコアでいうなれば「全く同等性が確保されていない不平等状態である」という評価になります。

  

世界全体のスコアでもこうした傾向は明らかであり、146か国の平均到達度は、「経済的参画・機会」が60.1%、「就学」が95.2%、「健康・寿命」が96.0%、「政治権限」が22.1%となっています。(下図)すなわち、「就学」と「健康・寿命」はほぼ満点で各国間で差は少なく、「経済的参画・機会」と「政治権限」で差がついており、中でも「政治権限」のスコアで最も大きな差がついているということになります。

  

  

このレポートでは各国にコメントを書いてくれていますが、日本については以下の記述となっています。(拙訳ですみません)

   

日本のスコアは2021年から2年連続で微減しています。 同等性は 64.7% (125 ) となり、2022年と比べ 0.25 ポイント、ランキングでは 9 位下落しました。 日本の政治権限における同等性は 5.7% で、世界で最も低い部類に入ります (138 )。 女性の国会議員10%、閣僚は8.3%に過ぎません。また、女性の国家元首/首相は今まで一人もいません。一方で 就学と健康・寿命の2分野ではほぼ完全に同等性が達成されています。 2022年から、推定勤労所得の同等性は 1.1% 改善しました。 女性の 54.2% が勤労に従事していますが、役員に占める女性の比率は 12.9% です。経済的参画と機会付与の同等性は56.1%で、146カ国中123にランクされています。」

と淡々と調査結果を述べています。

  

それにしても先の統一地方選挙でもずいぶんと女性の候補者が増え、当選者もそれなりに増えているようなのにどうしてスコアの改善は遅々として進まないのでしょうか?この疑問を解消すべく、スコアの算出方式について詳しく調べてみました。

   

日本の評価が著しく低い「経済的参画・機会」「政治権限」については下表のような算出方式になっていました。

   

   

4つの評価項目はさらに詳細な評価項目に分かれており、「経済的参画・機会」は5つの、「政治的権限」については3つのさらに細かい評価項目で構成されています。細かい説明は省略しますが、これらのさらに細かい評価項目はその影響がそれぞれ均等に反映されるように重みづけをされています。「経済的参画・機会」では5つのさらに細かい評価項目が1/5ずつ、「政治的権限」であれば3つのさらに細かい評価項目が1/3ずつ反映されて評価項目のスコアとなっているということです。

   

「経済的参画」のさらに細かい評価項目をひとつずつ説明します。「労働参加比率」は、15歳から64歳における男女の就労率の男女差です。「賃金の同等性」については、類似の業務内容における男女格差を12000人を対象とした聞き取り調査により7段階に区分しています。「推定収入の男女差」「議員、高級官僚、会社役員における割合」「技能職」、「技術職における同等性」、は、いずれもILOの統計から算出しています。ここで言う議員とは「立法府の議員」なので国会議員のみをさすものと思われます。細かな評価項目の内容がこのようであれば、現状の日本が高い評価を受けられないのはしかたがないような気がします。

   

さらに評価が最も低かった「政治的権限」ですが、この評価は「国会議員」「大臣」の女性比率、「州知事および首相の過去50年間の女性在任期間比率」で決まります。つまり市・区会議員や、都道府県議会議員、市区村長はカウントされないというシステムなのです。「政治的権限」のスコアを一挙にあげるには、大臣の半数を女性にするのが最も現実的で短期間で実現できることだと思われます。

   

残りの「就学」と「健康・寿命」についても同様に詳細項目を紹介します。

   

   

こちらは簡単に紹介します。「就学」については「識字率」と「小、中、高等学校の就学率」の男女差でスコアが決まります。一方「健康・寿命」では「出生における男女比率」と「健康寿命の男女比」できまります。こうした算出方法であれば、各国ともにスコアが高いことについて納得できると思います。

   

具体的な算出方法を見ると、このままではなかなか日本の評価が上がらないことが理解されると思います。「世界最低部類」と評価される「政治権限」をあげるためには、法律で立候補者の女性比率を定める、あるいは定数に男女比率を定めるなども議論すべきなのかもしれません。

  

明日は、Gender Gap Report 2023から引用して、興味を持ってもらえそうなデータをご紹介します。

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