かんとこうブログ
2023.11.06
”要約” IEAの「世界エネルギー見通し2023」 その2
先週の概要に続き、今日からは各論をご紹介していきます。
https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2023/overview-and-key-findings#abstract
1. 移行の競争は激化している
このエネルギー見通しの背景は、残念ながら紛争と不確実性であり、それが皮肉にも化石燃料時代の脆弱さとクリーンエネルギーへの移行のメリットを際立たせているとしています。クリーンエネルギーへの移行は一部に逆風があるものの、おおむね順調でありこの10年のうちに化石燃料の使用はピークを迎えることが確実になりました。
しかしながら、政策シナリオ(STEPS)では、2030年までの総エネルギー需要の年平均成長率は0.7%で、過去10年間のエネルギー需要の伸び率の約半分です。需要は2050年まで増加し続けます。公表された誓約シナリオ(APS)では、効率の向上と、化石燃料ベースの代替燃料よりも電気を動力源とする技術(電気自動車やヒートポンプなど)の固有の効率上の利点により、総エネルギー需要が横ばいになります。「2050年ネットゼロエミッションシナリオ」(NZE)では、電化と効率化がさらに加速し、2030年までの一次エネルギーの年間1.2%の減少が見込まれています。つまり、テクノロジーへの移行が進展すればするほど使用するエネルギーは少なくてすむのです。
ここからの10年でアメリカとカタールによって天然ガスの供給量が大幅に増加します。さらにロシアとカナダが大幅に減少します。(下図)こうした変化は、地政学的な緊張(紛争)の影響についても変化をもたらすとみられています。
将来の電力需要の伸びのほとんどは新興市場国、発展途上国によるものと考えられています。そこでは安価、信頼性、供給安定性がポイントになります。とりわけ太陽光発電は、クリーンエネルギーへの道筋を明るく照らしていると考えられています。(下図)
2.文脈とシナリオの設定
エネルギー安全保障と供給安定性に対する懸念が高まる中各国が新しいクリーンエネルギーに関して激しく争っています。しかし、温室効果ガスの排出量は依然記録を更新中であり、気候リスクや生活費の高騰などが起こっています。
一部に逆風はあるものの、5年前は化石燃料を1ドル消費することに対しクリーンエネルギーへの投資が1ドルという状況でしたが、それが今では、化石燃料1ドル消費に対し1.8ドルがクリーンエネルギーに投資されるようになりました。投資についてはこの10年間で大きく変化し、化石燃料への投資からクリーンエネルギーへの投資にシフトしていることが明確になっています。(下図)