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かんとこうブログ

2023.11.07

”要約” IEAの「世界エネルギー見通し2023」 その3

昨日の続きを書きます。今日で本項は最終日となります。なお本項の原文は下記接続先からご覧ください。

Pathways for the energy mix – World Energy Outlook 2023 – Analysis - IEA

4. エネルギーミックスの道筋 

2022年は激動の年となりましたが、政府の介入などで世界のエネルギー需要は1.3%増となり、最近の平均と一致しました。世界のエネルギーシステムには変革が起きており、それはさまざまなところに兆候が表れています。EVは全自動車販売台数の15%を占めるようになり、2030年には40%まで達すると予想されています。太陽光発電は、過去最高の220GWに達し、2030年には2倍に達すると予想されています。ヒートポンプではSTEPS(政策シナリオ)の2倍になると予測されています。太陽光発電と蓄電池は2050年にはNZE(ネットゼロエミッション)で必要な量を確保できる可能性がでてきました。

また化石燃料については、3つのシナリオ(STEPS,APS,NZE)とも一致して2030年までにピークを迎えるという予測となり、化石燃料の割合がSTEPSで73%、APSで69%、NZEで62%まで低下すると予測しています。発電総量に対する太陽光発電の割合や、輸送機械に占める電動機械の割合などでも大きく変わろうとしています。(下図)

この図では、EV,太陽光発電、暖房機器、化石燃料に焦点をあてて、いつどういう変化点に到達するかを示しています。エネルギーのすべてが大きく変化しようとしていることが理解できると思います。

また電力の内訳予測については、下図の予想がなされており、いずれのシナリオでも今後は太陽光発電、風力が主流となると予想されています。天然ガスと石炭は大きく減少します。

クリーンエネルギーへの変換は、より一層の電動化(電化)を促進します。下図は代表例として、工場、建築物(住居)、輸送機械における各シナリオの予測を示しています。いずれも化石燃料は将来大幅に減少し、NZEではほぼ使用されなくなるという予測であることがわかります。

5. 安全で人間中心のエネルギー転換

世界の平均地表温度上昇を1.5°C未満に抑えられるかどうかは、エネルギー転換がリスクを最小化した状態で可能かどうかにかかっています。 気温の上昇について、STEPSでは2050年に1.9℃、2100年に2.4℃の上昇、APSでは2100年に1.7℃の上昇、NZEでは、今世紀中盤にピークを迎えた後で下降に転じ、2100年には1.4℃の上昇と予測しています。(下図)

エネルギー転換に伴うリスクの1つは、クリーンエネルギー技術と重要鉱物のサプライチェーンに関するものです。両者のサプライチェーンは地理的に集中しています。増大する需要に対応するための分散投資は有効ですが、国際的な連携・協調も必要になります。クリーンエネルギー技術に関する重要資源に関する供給量の寡占状況を下図に示します。特に中国の独占ぶりが目を引きます。

現在はクリーンな料理法を利用できない人が23億人、電気を利用できない人が7億人おり、これらの数は各シナリオによってそれぞれに減少すると予測されています。(下図)

安全で人間中心のエネルギー転換ができるかどうかは、高水準の投資の確保にかかっています。中国以外の新興市場国と発展途上国ではエネルギー投資のギャップが大きく、ほとんどの最終用途分野ではすべての地域で投資が遅れています。

6. 各国・地域の将来見通し

ここでは、STEPとAPSを使って各国・地域ごとに2050年の状況に焦点をあてます。現在各国の状況は多様であり、ゴールにむけての出発点はそれぞれです。異なる出発点から異なる経路でそれぞれにクリーンエネルギーへの転換を目指すことになります。(下図)

各国・地域においては、その国や地域の法律や制度がクリーンエネルギーへの転換を支援している例があります。アメリカにおけるインフレ抑制法、EUのネットゼロ産業法、インドの生産連動型インセンティブスキームなどです。いかなる国においてもクリーン技術や関連資源を自国ですべて賄えるわけはなく、国際的な協力関係が不可欠となります。また化石燃料減少に伴う収入の減少については、より広範囲の経済の多様化が必要となります。

各国・地域の2030年におけるクリーンエネルギー転換の状況をさまざまな角度から数値化して下図に示します。

以上がIEAが発表した「世界エネルギー見通し2023」の概要です。全編を通じて訴えているのは、化石燃料はまもなくピークを迎え、世界のエネルギー供給に大きな変化が起きていること。クリーンエネルギーへの投資は増加しているが、まだNZEのシナリオを実現するには不足であること。国際的な協力がますます必要になることなどです。太陽光発電により、まだNZEシナリオ達成の可能性を残されていることも考え併せ認識を新たにしました。日本の国内にいるとこうした世界の動きを触れるチャンスが少ないように思います。これからもこうした情報に対しアンテナを高くして収集に努めたいと思っています。

日本語版(私製)

files/files20231102161448.pdf

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