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かんとこうブログ

2023.11.27

CO2還元反応の実用化はどこまで進んでいるか?

先日ダイセル株式会社の太陽光超還元反応についてご紹介しましたが、CO2を原料として有用物質を作るというのは多くの研究者が取り組んでいる課題でもあります。ダイセルの場合には、窒素をドープしたナノダイヤモンドを触媒として太陽光のエネルギーだけでCO2をCOとO2に分解するという反応でしたが、その他にはどんな試みがなされているのか調べてみました。とは言え、素人のインターネット検索だけの結果ですので到底すべてが網羅されるはずもありませんが、それでも大変多くに情報が得られました。できるだけ信頼性の高いものを選んでご紹介していきたいと思います。

最初は旭化成のCO2ケミストリーをご紹介したいと思います。下図に示すような反応経路ですでにポリカ―ボネートは実用化されており、海外にライセンスもされています。またイソシアネートも実証化運転開始の段階にあるようです。

イソシアネートに関しては理化学研究所が独自に開発したチタンヒドリド化合物を用いて温和な条件下において、窒素分子のN≡N結合および二酸化炭素のC=O結合を切断するだけでなく、新たにN=C結合を形成させ、イソシアネート(-N=C=O)の合成に成功しています。(下図)

次にご紹介する三菱ガス化学はCO2とH2を原料としてメタノールを製造する実証実験をすでに開始しており、さらに昨年7月に株式会社トクヤマの徳山製造所内で排出されるCO2と発生するH2を原料とした事業化検討を開始しています。メタノールは様々な化学製品の基幹物質でありカーボンニュートラルを実現する有力は素材として期待されています。またバイオマスや廃プラスチックなどからの環境リサイクル品由来の水素も含めた環境循環型メタノール構想を提示しています。(下図)

CO2のメタノール化については三井化学も2008年にCO2とH2からメタノールを合成する実証プラント設備を稼働させており、今年5月には大阪ガスと共同で泉北コンビナートにおいて排出されるCO2を回収し資源化するための実証実験を行うとの発表をしています。(下図、下記URL))

https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2023/2023_0531_2/index.htm

さらにCO2のメタノール化については、産総研の情報もありました。イリジウム原子2個を含む複核イリジウム触媒を用いて低温低圧の温和な条件でのCO2をメタノールに変換できたと報告しています。(下図)

以上が比較的進んでいるCO2の資源化技術の概略ですが、CO2の資源化については、多数の大学や企業が参加して大がかりな実証実験も開始されています。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が立ち上げたプロジェクトに東京大学、大阪大学、理化学研究所、宇部興産、清水建設、千代田化工建設、古河電気工業が参加して下図に示すスキームで、CO2の資源化プロジェクトが進行中です。

このプロジェクトにおいては、回収、濃縮、電解還元に工程を経てCO2を資源化するプロセスを実証しています。還元触媒を宇部興産と古河電工が、電界リアクターを理化学研究所と大阪大学が担当するようです。参考までに電気化学的なCO2還元反応について若干補足すると、CO2電解還元反応は常温・常圧条件で進行することに加え、高付加価値な多炭素有機化合物(炭素数2個以上の化合物)を一段階で合成できることから、効率的なCO2還元資源化技術として注目されています。プロジェクトの参加者の一端を担う大阪大学では、この変換反応が起きる場である電極について電解液、金属触媒、ガス拡散電極からなる三相界面を精密に設計することで飛躍的に反応速度を高めたことを報告しています。(下記URL)

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20221216_2

   

こうしたCO2の資源化に関して少し違う角度からの研究もおこなわれていました。CO2を原料とすることの難しさのひとつは、CO2が対称性の高い直線状構造であるためエネルギー的に安定で変化しづらいことであり、通常の加熱だけで容易に反応が進みません。これを打破する試みとして比較的温度の低いプラズマ(非平衡プラズマ)の利用が東京工業大学で検討されており、熱だけによる反応に比べて反応速度が約3倍になったことが報告されています。

調べていくとどんどん情報が出てくるのでキリがありませんのでこのあたりで終わりにします。素人の私がちょっと探しただけでもこれだけの実証実験やら研究やらが進んでいることがわかっていただければ今日の私の目的は達します。生煮えのまま書いてしまい、理解の難しいところもあったかと思いますが、CO2の資源化は想像をはるかに超えるスピードで進展していることは間違いがないようです。

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