かんとこうブログ
2023.12.14
オーロラが発生するしくみ
先日北海道で「低緯度オーロラ」が観測されたことが報じられていました。オーロラは緯度が高い地域でないとみられないことは知っていましたが、どうして緯度が高くないとみることができないのでしょうか?皆さんはその理由をご存じでしょうか?調べてみるととても奥深い話のようです。ネット情報も表層だけに過ぎないものも結構多くあるようです。今日ご紹介するのは、名古屋大学宇宙地球環境研究所の塩川和夫先生の書かれた「オーロラと低緯度オーロラの解説」というサイト(下記URL)をほぼそのまま引用させていただきました。ネットで見られるものの中で最も丁寧にわかりやすく説明している内容と思われます。
https://stdb2.isee.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_kaisetu.htm#_top
まずオーロラが光る理由についての説明です。
オーロラが光る理由は、簡単に言えば、太陽から高速で流れてくる太陽風に含まれる電子が大気を構成する窒素分子、酸素分子、酸素原子とぶつかり、これらの分子や原子の電子がエネルギーを受けて励起され、よりエネルギーの高い軌道に遷移したあと、元の軌道に戻る際に余分なエネルギーを光の形で放出する(上図)からです。太陽風については明日に説明しますが、太陽の表面でおきる大規模な爆発などによって宇宙に吹き飛ばされたプラズマ(陽子と電子がバラバラになって存在している状態のもの)を含む高速の流れのことです。ここではこれ以上説明せずに、そういうものが太陽からとんできてオーロラを発生させるとしておいてください。このままオーロラについて説明を続けていきます。
オーロラの色は、さきほどのプラズマの電子により励起される大気を構成する分子や原子の電子の励起状態と元に戻った状態のエネルギー差によって決まります。(上図)エネルギー差が大きいほど青く(波長が短い)、小さいほど赤く(波長が長い)なります。ただし、軌道にエネルギーは決まった数値なので、不連続です。従って連続的に変化する色が発生するわけではなく、決まった色に限定されます。
オーロラの高さは90Kmから600Kmで、よく光るのは100Km~300Kmのところになります。飛行機の高度は約10Kmですから、それよりははるかに高く、スペースシャトル(400Km)とほぼ同じ高さになります。地球の大気は地球の半径に比べて大変薄く、表面に張り付くようにしか存在していません。空気の存在がオーロラの高さもそして色も決めているのです。
オーロラの高さと色は実は密接に関係しています。これは高さによって大気の組成が異なっていることが原因です。大気の組成は、80Kmまではほとんど変わりませんが、80Km~100Kmまでは窒素分子が多くなり、それ以上170Kmまでは酸素原子が中心になります。上の説明文では、代表的な色のオーロラとして赤、緑、青の3色が説明されています。この3色の中で一番波長の長い赤い色のオーロラは150Km以上の高さで光るのですが、それはこの高さの大気の主成分である酸素原子の電子が励起されて光っています。次に波長の短い緑は100Km以上の高さで光りを発し、ここでも大気の主成分である酸素原子の電子が励起されて光るのですが、赤と比べより大気分子の密度が高いところなのでより明かるく光ります。青いオーロラは、さらに低く90Km~120Kmでひかり、今度はこの高さの大気の主成分である窒素分子のイオンが励起されて光っています。
左の写真では、オーロラの高さによって色が異なっています。最も高いところが赤、少し下が黄色、そして一番下が緑です。このようにオーロラの色から、その光を発している高さとオーロラを発生させている電子のおおよそのエネルギーを知ることができるのです。
とここまで、オーロラの発生する様子をみてきました。しかし、ここまでの説明では、極地付近でしかオーロラが観測されない理由はわかりません。オーロラを発生させる太陽風はどのような経路で極地にやってくるのでしょうか?
最初の方で、オーロラを発生させているのは太陽風であると書きました。その太陽風はもちろん高速プラズマが太陽から地球にむかって流れてくるのですが、始めから極地付近をめざしているわけではありません。地球に接近してくる太陽風の方向を変えているのは磁力線です。地球は全体が磁石になっており、地球のまわりには磁力線が存在します。磁力線に電荷を持ったものが近づくと排斥されてしまいます。すると太陽から見た地球の裏側にはちょうどエアポケットのような場所ができ、プラズマ粒子が密度高く集まってきて、プラズマシートと呼ばれる熱いプラズマの集積地ができます。ここで集積されたプラズマが、磁力線によって地球の極地付近に引き戻されることによりオーロラが発生するのです。かなり複雑な過程でプラズマ粒子が極地付近に集まってくる様子が理解できると思います。
さてここまでオーロラがどのようにして発生するかを説明してきました。塩川先生のオーロラについての説明も一旦ここで終っています。まだ太陽風について、あるいは低緯度オーロラについての説明ができていませんが、それは明日にしたいと思います。
なお本記事の作成にあたり、名古屋大学の塩川先生に、先生が書かれた解説を引用させていただくことについてお願いをしたところ、快諾していただきましたことを記しておきます。