かんとこうブログ

今週の日曜日、国立競技場で行われた陸上競技の日本選手権10000メートルで、富士通の塩尻選手が日本記録を更新しました。（下の写真　日本選手権10000メートルのポスター：日本陸上競技連盟のホームページから引用）

もう今年は日本記録が更新されるような競技会はありませんので、最後の日本記録更新になります。そこで今年更新された日本記録を改めて確認してみたいと思います。日本記録はオリンピックで行われていない種目でも公認されていますが、ここではオリンピックで実施されている競技に限定してご紹介します。

この中で今年一番の驚きの更新は何と言っても400Mの佐藤拳太郎選手の44.77です。昨年の世界ランキングに当てはめると21位に過ぎないのですが、更新される前の記録が32年前の記録であるが故に衝撃的でした。しかも世界選手権という大舞台で更新したのですから、この瞬間は感動的でした。

10000メートルの塩尻選手の更新については、一挙に3人が更新したという点で衝撃的でした。塩尻選手以外の2人は塩尻選手に更新される前の記録保持者の相澤選手とトヨタの太田選手です。これらの3人に続き今回歴代4位の記録を出した田澤選手なども加わって切磋琢磨し、どんどんレベルを上げて行ってほしいと思っています。

3000mSCの三浦選手は自分のもつ日本記録を2年ぶりに0.01秒更新しました。世界選手権でも入賞しており、来年には社会人になりますので、さらなる更新を期待したいと思います。

110mハードルは、同タイムで2人が日本記録保持者となりました。この種目は複数人が日本記録保持者となることが多く、少し前まで3人が同記録で日本記録保持者という時期がありました。このことはそれだけレベルの高い選手がそろっているとも言えるわけで、世界に通用する種目でもあることから、さらなる切磋琢磨を期待したいと思います。

35km競歩については、今年から世界選手権やオリンピックで実施されるようになりましたので、昨年まで日本記録の公認がされていませんでした。周知のように日本の競歩は男女ともレベルが高く、世界と戦える種目ですので、ブダペストで結果を残せなかったことを教訓にして捲土重来を期してもらいたいと思います。続いて女子です。

女子のトラック種目は田中選手の5000メートルの更新だけに終わってやや寂しい感じがしますが、この記録はアフリカ勢の背中を捉えた、とんでもない大記録です。これまでの廣中選手の記録を一挙に23秒更新したのです。23秒というと距離にして120メートルくらいになりますますので、いかに大幅更新かということが解っていただけるのではないかと思います。

トラック種目に比べて、フィールド種目は跳躍4種目中3種目、投擲4種目中2種目で日本記録が更新され大いに活気づきました。跳躍では走幅跳の秦選手の6.97が光ります。17年前の池田選手の記録を更新したということもさることながら、７mまであと3センチに迫ったこと、2022年の世界ランキングの8位相当であることも価値があります。三段跳の森本選手も24年前の花岡選手の記録を更新したのですから価値があります。棒高跳の諸田選手の記録更新も11年ぶりですので、2023年は跳躍にとってエポック・メイキングの年であったと言えます。

投擲では、もはや有名人になった北口榛花選手が自己の日本記録を４年ぶりに塗り替えました。世界選手権の金メダル獲得も含め世界女王として世界に君臨した年になりました。ハンマー投のマッカーサー選手の更新も19年ぶりの更新であり、止まっていた時計の針を進める価値ある更新でした。

今年は長い間更新されていなかった記録がかなり更新されましたが、まだ長い間更新されていない日本記録は残っています。それなりにレベルの高い記録であり、来年の更新も簡単ではないと思われますが、参考までに古い順に男女2つずつご紹介します。

男子三段跳の山下選手の記録は37年前、やり投げの溝口選手の記録は34年前、女子走高跳の今井選手の記録が22年前、砲丸投の森選手の記録が19年前になります。実は女子走高跳における1M90以上の記録はすべて2004年までに記録されており、2005年から今年までの18年間の最高記録は1M85に過ぎません。同様に砲丸投における現役選手の最高記録は森選手の日本記録から1M65も低い記録です。この2種目は当分更新される可能性は低いと思われますが、そうであったとしても、今までより強く現役選手達の奮起と記録更新を期待したいと思っています。