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かんとこうブログ

2024.05.01

世界の軍事費を少し詳しく見てみると・・

先月、スウエーデンの国際平和研究所が、2023年の世界の軍事費を発表しました。前年比が6.8%増加し総額2兆4430億ドル(378兆円)であり、9年連続増加で1988年以降過去最高となったと報じられました。軍事費金額上位5か国は、アメリカ、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで5か国の占める割合が61%に達するとも言われています。

今日はこの発表の元になった同研究所のData Baseから引用したデータをご紹介し、主要国の軍事費の大きさをすこし多面的に眺めてみたいと思います。すべての国について調べるのは大変なので、G7国と気になる国(中国、ロシア、インド、韓国)の合計11か国の比較をしてみました。

最初ご紹介するデータは2000年~2023年の軍事費と直近10年の平均増加率です。金額は2022年の為替レートでUS$に換算されています。図中の数字は最近10年間(2013-2023年)の年平均増加率(CAGR)で、グラフの線の色と数字の色は同じ国のデータの組み合わせとなります。

左上のグラフで、1位アメリカと2位中国の差はまだ大きいものの、差は縮まり続けています。この10年アメリカはトランプ前大統領の方針変換もあり、軍事費はほぼ横ばい状態ですが、中国は年率5%以上で増加し続けています。右上のグラフでは、ロシアとインドの増加ぶりとイギリスの増加率との差が対照的です。一般に途上国は軍事費の伸びが大きくなっており、その背景には経済成長率の高さがあると思われます。

左下のグラフで、ドイツ、フランス、日本はよく似た推移になっていますが、2022年以降の上がり方には差があります。ウクライナ紛争への距離感の差と思われます。右下の図では韓国の増加ぶりとイタリアの迷走が印象的です。イタリアの迷走は経済不振によるものと推定します。

つづいて軍事費の対GDP%です。

対GDP%は自国通貨どうしの計算であり為替要因が入りません。そうした意味で全体を眺めれば、ウクライナ紛争要因を除けば各国ともほぼ対GDP%は一定であるように思えます。アメリカは対GDP比で見ればむしろ減少気味ですし、これらの国の中ではGDP比が低かった国が、この10年の年間増加率で高い群に属しているのも興味深いことです。

つづいて、一人あたりの軍事費(USドル/人)です。

さきほど軍事費の対GDP比はウクライナ紛争を除けば全体的に横ばいであったことがわかりました。とするとこの一人あたり軍事費の増加傾向は、GDPの増加傾向あるいは物価の上昇傾向とも考えられます。ここで認識すべきは、一人あたりの金額ではアメリカがダントツで、以下ヨーロッパの中核国、韓国、ロシアが続き、下位グループを日本、中国、インドが形成するということです。この順位は軍事費全体の順位とは全く異なっています。中国やインドにしてみれば軍事費の増加を指摘されても、一人あたりではまだ全然少ないと主張するかもしれません。

2023年だけで軍事費全体、軍事費の対GDP比、一人あたり軍事費について11か国の比較表とグラフを描いてみました。

アメリカは全てで2位以内と軍事大国であることが間違いありませんが、全体の軍事費が2位と4位の中国、インドの一人当たり軍事費は10位、11位であり日本よりも少ない金額でした。だからと言って中国の軍事的脅威がなくなるわけではありませんが、軍事費(日本では防衛費と呼んでいます)の議論においては、こうした面も考慮しておくべきではないかとも思います。

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