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かんとこうブログ

2024.09.09

続いて台風の弱体化・・タイフーンショット計画について

台風が来る度に思うことのひとつに、台風を弱体化するなり方向を変えるなりできないものか?というのがあります。というのも何十年も前にみたテレビ番組で、飛行機でドライアイスを散布することで台風の勢力を衰えさせることができるという話を見た記憶があるからです。そんな昔の番組を今でも覚えている理由は、「効果が確認されているのにこの方策が実行に移されなかったのは、台風が日本にもたらす雨量が年間の1/3ほどあり、台風が激減あるいは弱体化すると日本が水不足になる恐れがあったためだった」という結論が大変印象深かったためです。

今回の台風10号では私の住む茅ヶ崎市でも大雨が降り、隣接する平塚市、海老名市、近郊の小田原市でも大きな被害がでましたので、現在の科学をもってしても台風を制御できないものか調べてみることにしました。

調べてみると、なんとすでに台風を制御するための国家プロジェクトが2022年にスタートしていることがわかりました。その名も「タイフーンショット」計画です。その概要を一言で言えば、「台風の威力を抑え、発電にも利用する「一挙両得」な防災対策を2050年に実現する」というものです。単に台風の威力を人為的に制限するだけでなく、制御したエネルギーを電力に変換して資源として利用するという計画です。この計画が開始された背景として、高精度の台風予測ができるようになり効果のシミュレーションが可能となったこと、2021年に横浜国立大学に台風科学技術研究センターが開設されたことなどが挙げられています。

計画の詳細は以下URLからご参照ください。

https://jstories.media/jp/article/typhoon-shot-project

   

この計画では「台風の巨大化プロセスに関わる「暖気核」と呼ばれる領域を冷却・弱体化することが狙いであり、飛行機に積んだ大量の氷やドライアイスなどの冷却物質を暖気核に散布するなどの手段で、既存の防災インフラが耐えられる水準にまで台風の勢力を人工的に弱らせること」を検討しています。具体的な方策については下図の中に人名のついたプロジェクトのタイトルがあり、そこに多岐多様なものが示されていますが考え方としては以下の3つに大別されます。

より具体的な台風の制御方法については下図をご覧ください。

タイフーンショット計画はまだシミュレーションが行われている段階ですが、「令和元年の台風第15号(房総半島台風)をモデルにしたシミュレー ションでは、上記物質(ドライアイスなど)を散布すると、散布後の中心気圧が3~5hPa上昇(台風が弱化)し、風速は1~3m/s 弱まることが分かった。わずかな差のようにも見えるが、建物被害に換算すると、台風が通過した神 奈川県では実に40%の軽減効果が見込める数字だという。」という知見が得られています。今後の進展に期待したいと思います。

ところで、この台風弱体化ですが、アメリカではすでに本格的な試みがなされていました。以下のサイトから引用してご紹介します。

  

最初の試みはなんと第2次世界大戦が終わった2年後に、爆撃機を使用して行われ、ドライアイス80Kgが散布されました。勢力は衰えなかったものの、ハリーケーンの上部の雲に変化が現れ何らかの影響を与えることに成功しました。

しかしその後台風が勢力を取り戻し、針路を変更してアメリカ本土に進んだため、大問題となりその後11年間実験が中止されました。この時の実験の悪影響という濡れ衣はやがて晴れましたが、その後の実験はなかなかうまくいかず、明白な成功となるまでには最初の実験から22年間の歳月を必要としました。

飛行機5機から投下され、高度1万1000メートルで爆発したヨウ化銀の散弾頭(数量不明)は風速を30%も減少させました。さらに再び勢力を取り戻した翌日にも同様な実験を行い風速を16%減少させることに成功しています。

風による被害は風速の2乗に比例するので、30%減少させると0.7*0.7=0.49で被害は半減することになります。日本のタイフーンショット計画の狙いもまさにここにあり、風をゼロにするのではなく減殺することで被害を大幅に抑制することを狙っています。

こうした成功をおさめながら、実際の台風にこうした抑制策が本格的に行われることはありませんでした。台風にはさまざまな利害があり、コースが人為的な理由で変わってしまうことで国家間や地方間で新たな利害の争いになりかねません。台風による雨水も一方では水資源でもあります。こうした点をひとつひとつ丹念に調整する必要があるからなかなか進まないのです。

しかしシミュレーション技術が飛躍的に進んだ現在、技術的には人為的な制御が成功する可能性は上がっていると信じたいと思います。台風10号でどれだけの被害が生じたかを考えるだけでも、研究するに十分な価値があると思われます。

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