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かんとこうブログ

2025.04.18

この先の原料供給が不安?・・経産省確報における原料の出荷数量と金額の動向

昨日、経産省2月度確報における原料の価格動向をご紹介しましたが、書きながら気になったのは、やはり調べている23品目の原料のほとんどにおいて、出荷数量の減少と数量と金額が乖離してきていることでした。毎月すべての原料について、出荷数量/出荷金額の推移をご紹介してはいませんが、グラフは毎月描いておりますので、今日は全23品目について、2021年1月以降の出荷数量と出荷金額の推移をグラフで示したいと思います。

最初は樹脂材料からです。

スチレンモノマー、アクリル酸エステル、エチレングリコールはある意味典型的な数量減少、数量/金額乖離の推移となっています。非常に特徴的なのがビスフェノールAで数量/金額の乖離が起きずに数量だけが減少しています。数量が減っても価格が上げられない事情があるものと思われます。メタクリル酸エステルとエピクロルヒドリンは、これら両者の中間的な推移になっています。定量的な面からの考察は後でまとめて行います。

次は有機溶剤です。

トルエンとキシレンは単価の上昇が最も高い原料ですが、両者の推移は少し違います。トルエンの出荷量がさほど減少していないのに対しキシレンの減少は著しく単価が下がっていないのに出荷金額が4年前よりも減少してしまいました。あとの4品目は似たような推移となっており、当初は数量、金額がつかず離れずでしたが、時間の経過とともに乖離傾向にあります。また数量は顕著ではないものの減少傾向にあります。

次は顔料です。

酸化亜鉛とカーボンブラックはこの間ほぼ一貫して数量と金額が乖離しており、数量は少しずつ減少しています。酸化第二鉄、フタロシアニン、酸化チタンは、途中から数量と金額が離れていきました。アゾ顔料だけいまだにつかず離れずの状態にあります。

最後は樹脂です。

樹脂はすべて程度の差はあれ数量金額が乖離しています。また数量ついても減少傾向でした。

全体的な傾向は冒頭書いたように、数量が減少、数量と金額が乖離傾向にあります。残念ながら多くの原料がこの傾向にありますので、これからも原料価格は上がり続けると考えておいた方がよいかもしれません。石油由来の原料が少なくないのですが、原油価格が下がってもナフサの価格がさがらない状態が続いていますので、楽観的な材料はあまりありません。為替が円高方向に振れることにわずかの期待がある程度です。

数量的な面から見てみたいと思います。2025年2月と2021年の1月の出荷数量、出荷金額を比較してみました。下表は2025年2月時点での出荷数量、出荷金額、単価の増減率です。数量の増減率はすべてマイナス、つまりすべての原料出荷量が減少していました。一方、出荷金額の増減では、減少しているのは2品目だけであとはすべて増加でした。減少の2品目はいずれも出荷数量が大幅に減少したため単価上昇にも拘らず出荷金額が減少しました。

この表の単価増減%については昨日ご紹介した単価指数と同じものです。参考までに各原料の2025年2月現在の単価指数(2021年=100)を下に再掲します。

さて、出荷数量増減%と出荷金額増減については、わかりやすくするための散布図を描いてみました。

この図から判断して最も不安な原材料は、ビスフェノールAとキシレンです。両者とも出荷数量が大きく減少し、出荷金額も減少しています。キシレンの単価の増減はプラスの135%(つまり2倍以上に上昇)ですが、数量の減少があまりにも大きいため出荷金額が減少しています。今後の供給安定性に不安を感じます。ビスフェノールはすべてが減少してしまっています。

次に不安を感じる原料は出荷量が大きく減少している品目で、2021年から40%以上出荷量が減少しているスチレンモノマー、エチレングリコール、30%以上減少しているトルエン、20%以上減少している酸化第二鉄、アクリル酸エステル、合成ブタノール、フタロシアニン系顔料などです。使用頻度の高い原料の供給量が減少することは価格高騰につながりやすいため心配になります。しかしもっと深刻なのは供給不安です。供給不安はさらに深刻な事態を招きかねませんので、以降、折に触れて出荷数量と金額のデータもご紹介することにしたいと思います。

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