お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2025.04.21

在日米軍関係費用の全体像

先週のトランプ関税に関する日米交渉の中で、トランプ大統領から在日米軍の駐留費用の負担をもっと増やすようにとの要求があったと報じられました。これに対し、日本は応分の負担をしていると回答したとも伝えられています。しかしながらこの時報じられた金額が2000億円強でしたが、違和感を感じましたので調べることにしました。今日はその調べたことをご紹介します。

まず世界に駐留している米軍兵力の実態からです。(資料は「在日米軍駐留経費を正当化する論理の 歴史的変遷」  山本章子防衛学研究 第71号  49-73 から引用させていただきました。)

日本の駐留兵力数は,2020年の時点でドイツの約1.6倍、韓国の2倍で、ダントツの世界一でした。こうした世界に展開する駐留米軍の兵士数は、しかしながら、第二次世界大戦直後に比べて世界中で著しく減少しており、大幅に縮小されていました。(下図:上図と同じ引用元)

これを頭に入れてもらって、まず「在日米軍駐留経費負担」と入れて検索しました。すると防衛省のサイトで下図が見つかりました。

https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/suii_table_r02.html

   

    

契約ベースも歳出ベースもほぼ同じ数字で、令和7年の予算額は2274億円で、先週報じられた金額と一致します。この金額の内訳は下図のようになります。

   

   

内訳がわかりましたが、まだ釈然としません。ネットでは今まで見てきたのと全く異なる数字も出てきました。

これは産経新聞の2016年ネット記事です。負担額が44億ドルあまり当時のレートで換算して5382億円で、負担率は74.5%とありました。上で示した2274億円とは大きな差があります。これはアメリカの国防総省の報告書などをもとに作成とあり、ほかのネット記事でも同様の数値が紹介されていました。2002年のデータとありますので、現在はすでに事情が違うかもしれませんが、負担率が74.5%と極めて高く、これ以上の負担を求められてもなあと思わずにはいられません。全額負担すれば、それは駐留米軍が日本の傭兵となったことと同じであり、指揮命令権が日本に帰属するのではないかという意見もありました。

探し続けるとさらに資料が出てきました。これも防衛省で令和7年度の在日米軍関係費というタイトルです。先ほど紹介した費用は「駐留経費負担」の一部に過ぎず、さらにそれ以外の費用負担があることがわかりました。

https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/index.html

   

   

この米軍関係費は大きく3つに分かれます。左から「在日米軍駐留費用」、「SACO関係費用」、「米軍再編成関係諸費用」です。最初の「在日米軍駐留費用」のうち、②の部分は日米地位協定により、もともと日本の負担となっていた部分ですが、①の「同盟強靭化予算」は、日米地位協定でアメリカ負担とされていた部分です。しかし歴代アメリカ政権は継続的に日本に対し駐留費用の負担増を求めた結果、特別協定を結び徐々に日本が経費負担に応じてきました。これが「思いやり予算」と呼ばれる部分です。したがって、「在日米軍駐留費用」として令和7年度に日本が支出するのは、2274億円ではなく②も含めた4572億円になります。赤沢大臣がトランプ大統領に、どう説明したのかわかりませんが、「在日米軍駐留費用」として日本が支払う予定額はトータルで4572億円であり、本来米軍負担であるものを日本が肩代わりしているものが2274億円であるということになります。

   

2番目のSACOは沖縄県民の負担軽減のための施策、3番目の米軍再編成関係経費は、このうちの沖縄の負担軽減に資すると考えられる費用を日本が負担するものです。アメリカから見れば、それは日本のためにやっていることだから日本が負担するのは当然と考えるでしょう。アメリカがどう考えようが、日本が支出する令和7年度の在日米軍関係費は2274億円ではなく6829億円となります。この金額は防衛省管轄の支出ですが、他省庁管轄の支出もあるそうです。

   

米軍駐留費用の負担増は、アメリカ歴代政権が繰り返し求めてきた要求であり、その都度日米地位協定を残しつつ妥協のための名目を考えて、特別協定を結び負担増の応じてきました。その名目については、「円高、ドル安」「国際貢献」「住民の負担軽減」などですが、この経緯は冒頭ご紹介した報文に詳細に記述されています。

   

アメリカ側から見れば、第二次世界大戦終了から80年も経過し当時とは世界情勢も大きく変化するなか、もっと負担に応じるべきだということでしょうが、日本の再軍備を恐れるがあまり戦争放棄を押し付け、一方で共産主義化を極度に恐れ共産主義に対する防波堤を維持するため日本に最大の海外兵力を駐留し続けている事実は変えられません。また、日本は、ロシア、中国、北朝鮮という難しい国といやでも対峙しなければならない位置にあり、アメリカの世界戦略上、最重要同盟国のひとつのはずです。過去の歴史を学びもっと日本の存在と貢献に対して理解と敬意を示すべきと思います。

   

コメント

コメントフォーム

To top