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かんとこうブログ

2025.05.14

廃アルミから資源・エネルギーをつくり、脱炭素をめざす・・アルハイテック社の技術

先日の「がっちりマンデー」で注目すべき会社として「アルハイテック社」が紹介されていました。この会社は富山県にあるベンチャー企業で設立は平成25年(2013年)と新しい会社ですが、可搬型水素製造装置「エ小僧」を開発し、日本のみならず世界から引く手あまたの会社のようです。ホームページを調べてみましたが、肝心の水素製造装置の化学的な部分がわかりませんでしたので、特許を調べてみました。するとこの水素製造装置の肝となる化学の部分が少しわかったような気がしました。以下すべて特許庁のデータ検索サイトで調べたデータからご紹介します。

同社の出願特許は14件公開されていました。このうち主なものを表にまとめてみました。字が小さくで恐縮ですが、上から下へ出願された順番に並べています。このうち赤い色をつけたところが化学的に重要だと思われる部分です。

この一覧表の中で最も驚いた特許は一番最初の水素エネルギーの供給システムです。これはこうすれば国際協業によって日本における水素ガス供給システムを構築できるのであるという概念を出願したもので、まだ装置ができあがる前にこの特許を出願していたというのは驚きです。出願されて特許として認められたシステムは第1図(下図)に示す通りです。

左上図において、アルミニウムの原料ボーキサイト産出国からアルミニウム加工国での精錬を経て日本で水素を製造し、水素をエネルギーとして使用する一方、水素製造の際に出た水酸化アルミニウムはアルミニウム加工国で精錬され再び水素の原料として使用されるというシステムを考案し出願したものです。内容もさることながら、水素製造装置の事業化に先立ちこうした実際に利用する際のシステムを特許化しておくという発想がすごいと思いました。

このほか装置に関する特許には図が付されていましたのでいくつか参考までに示しておきたいと思います。ただし、あまり化学的な興味は惹かれませんので説明は省略します。

話を化学に戻すと、アルミニウムは両性酸化物として有名であり、アルカリにも酸にも溶解して水素を発生します。しかし死蔵装置となると問題は如何にして効率で反応を継続できるかということになります。出願された特許の中で、そうした観点で眺めると意味がありそうなのは、赤く色づけした2件と上から5番目の拒絶査定となったものです。さらによく見ると技術的な興味は断然下から3番目の特許に収斂されてきます。事実この特許には、大変よくまとまった一連のグラフがついており、私の説明なしに眺めてもらっても言いたいところは理解できると思います。

最初は、テトラヒドロキシドアルミン酸イオンの有無で大違いというグラフです。くり返しまたは経過時間につれて(A)と(B)の違いは歴然としています。

次はアルカリの濃度の違いです。テトラヒドロキシドアルミン酸イオン存在下でアルカリ濃度を変化させたときの繰り返し反応させて時に反応速度に明確な差が現れます。十分なアルカリが必要ということがわかります。

想像するに、触媒の種類や量とともに、このあたりの反応条件を細かく条件を設定して実験を繰り返し、最適条件を選択しているのではないかと思われます。水素製造装置において反応液はキーマテリアルとなりますが、技術的な要点はこのあたりではないかと想像しています。いずれにせよ世界に誇れる素晴らしい技術であることは間違いありません。一連の技術の実用化がさらに進み未来のクリーンエネルギー技術として発展していくことを祈ります。

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