かんとこうブログ
2026.07.09
すばる望遠鏡の主鏡は直径8.2メートル
月刊文藝春7月号に物理学者の大栗博司先生の「宇宙を見る鏡」という話が載っていました。ハワイ島北部にあるマウナケア山の山頂にあるケック天文台の理事を務められているそうで、この天文台に設置してある巨大望遠鏡の話が書かれていました。マウナケア山頂は標高4000メートル以上の高さにありますが、なぜこのような高所に巨大望遠鏡を設置することになったのかに始まり、20世紀の巨大望遠鏡の歴史を辿り、望遠鏡に使用されている主鏡について様々なエピソードを紹介されていました。読むにつれ驚きの連続で、よくもまあこんなものを作ったものだという感心とそしてそれら巨大望遠鏡群の観測によりもたらされる知られざる宇宙の神秘に対して驚嘆しておりました。なかでも巨大望遠鏡に使用されている巨大な主鏡について大変興味をそそられて、いろいろ調べてみましたのでご紹介したいと思います。
今日のタイトルとした「すばる望遠鏡」は日本の国立天文台の観測施設に備えられている巨大望遠鏡であり、実は大栗先生の記事の中では決して主役の望遠鏡ではないのですが、そこは日本のものの方が調べやすいので、マウナケア山に存在する巨大望遠鏡群の代表としてはすばる望遠鏡を選ばせてもらいました。ともかくすばる望遠鏡がどれだけすごいか、下図をご覧ください。すばる望遠鏡のサイト(下記URL)からの引用を中心にご紹介していきます。
https://subarutelescope.org/jp/about/features/7.html

このような巨大望遠鏡は反射型望遠鏡と呼ばれ、私たちに身近な二つのレンズを組み合わせた望遠鏡とは構造が異なります。観測の仕組みは後で説明するとして、とにかく、一番大事な宇宙からの光を集めて反射する役目を担うのが主鏡であり、集光能力は鏡の面積に比例しますので、巨大化の歴史を辿りました。倍率で言えば人間の目の100万倍以上、視力に例えれば1000以上、富士山頂においたコインを東京から見分けられるほどだそうです。
その鏡の大きさは上図の下の写真を見てもらえれば想像できるようにとんでもなく大きく、厚さ20センチ、重さ22.8トンもあります。これだけ大きくなると気温の変化や観測のための操作などにおいて正確な鏡の形状を保持することができません。このため支持機構として三菱電機が製作した261基のアクチェエータで背面から支えて微妙な調整を行っているそうです。(下の写真)

あの硬いガラスが自重でゆがむというのも想像できませんが、それを瞬時に補正するシステムが装備されており、鏡面粗度を常に 100 nm (10−7 m) の桁に保持するというのも驚きます。わずかな凹凸も障害になるということです。
さてこのすばる望遠鏡では観測は、私たちが望遠鏡を覗くのとは少し異なります。下図で説明いたしますが、下図はすばる望遠鏡の子供用サイトに掲載されていました。これが一番わかりやすかったので少し表現を大人用にして説明資料としました。
https://subarutelescope.org/jp/Kids/

まず宇宙から集めた光を凹面鏡である底部の主鏡で集めます。その光を望遠鏡の上部先端付近にある副鏡で反射させ、再び主鏡の中央部へ送り返します。そして主鏡中央部の穴を通過した収束光がCCDカメラで補足され記録されます。人間が目視で観察してはいないのです。
この望遠鏡で観測できるのは赤外光と可視光で、これらを捉えるために4つの焦点があります。これも子供むけサイトからの引用です。

とにかく今日ご紹介したかったのは、8.2Mという巨大なガラスの鏡のことです。ひずみを生じないよう熱膨張率の小さな耐熱ガラスを使用していること。その耐熱ガラスはパイレックスという商品名で有名なコーニング社で製造されたこと(現在同社は耐熱ガラスの製造を中止しているそうです)、焼きなまし工程が一年にも及ぶこと、あの巨大な鏡をニューヨークからハワイ島の山頂まで運搬し、設置したこと、どれを取っても偉業ともいうべき素晴らしいことばかりではないかということです。
最後に大栗先生はこのように締めくくっています。「宇宙を見る鏡は、同時に科学を支える社会の姿も映しだしているのです。」すなわち、このような巨大望遠鏡をつくり観測を続けることは、そうしたことをできるだけの力のある社会であることの証明であるということです。
とここで終わればよいもの余計なお節介で耐熱ガラスと物質の熱膨張係数について少しデータを載せておきます。最初は耐熱ガラスです。通常のガラスはソーダ石灰ガラスですが、耐熱用はそこに酸化ホウ素が加わり、アルミやカルシウムなども多いホウケイ酸ガラスとなっています。熱膨張係数が小さいだけでなく科学的な耐久性も優れています。
https://www.nichiden-rika.com/data/qa

次は物質の熱膨張係数です。有機物は金属や岩石などと比べて熱膨張係数が大きく従って耐熱性も劣ります。一方ガラスは岩石など比較しても熱膨張係数が小さく、かつ有機物と併用すると混合物の熱膨張係数を小さくすることができます。(下記URLより引用して作図)これは塗料にも応用できる技術です。
https://www.samaterials.jp/thermal-expansion-coefficient-metals-alloys-and-common-materials.html
