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かんとこうブログ

2021.08.10

五輪が終わりコロナの現実と向き合うと・・

一昨日東京オリンピックが閉幕しました。困難な状況にも拘わらず、ベストを尽くして競技を行った選手 達には敬意と感謝の意を表したいと思います。一方で、大会期間中に国内の新感染者は著しく増大し 未曽有の事態になっています。大会期間中はコロナ関連のニュースの絶対量が減り、目に触れる機会 が減ったこともありますが、とにかく大変なことになっているのは間違いありません。収束にむけてどう すべきか考える材料を紹介したいと思います。

まず現状の新規感染者数のレベル認識です。これまでのどの緊急事態宣言の時よりも多いということ は周知となっていますが、現時点での諸外国と比較した場合はどうなのでしょうか?札幌医科大学の 特設サイトから直近 7 日間の新規感染者数(7 日間の平均値)を示します。

この図を見て、日本は少ない方だなどと安心しないでください。確かにイギリス、フランス、アメリカの 1/3 以下ですが、レベル的にはイタリア、インドネシア、メキシコなどと同等で、なにより世界平均よりも 高い感染率なのです。もっと驚くのがインドはいつの間にか新規感染者を大幅に減らしています。現時 点では、日本はインドの 4 倍弱の感染率になっています。

それではこの先感染者数や重症者数がどのような推移と辿ると予測できるのでしょうか?すでに専門 家が計算していますが、見たところ単なる過去からの倍率を使って計算するだけの予測値ですので、ここでは自前の予測例として直近 30 日の新規感染者数と重症者数の推移を使って、近似式から求めた 数値をご紹介します。いつも行っている東京都の感染者数の予測と同じ方法です。

東京都の新規感染者数(7 日間の移動平均)と重症者数の直近 30 日のグラフです。近似式はいずれ も多項式(2 次式)で高い相関係数が得られています。これらの多項式を使って計算すると、新規感染 者は、今から半月後に 8900 人、1か月後には 15700 人という結果になります。一方重症者は、半月 後に 317 人、1か月後に 560 人という数字がでてきます。このままでは完全に医療崩壊につながりか ねません。断わっておきますが、これはあくまで数学上の計算で、疫学的な要素は全く入っていません。しかしながら、それは専門家の計算でも同じです。

それでは、頼みのワクチン接種が進めば、感染者が減るという期待はかなえられるのでしょうか?これ は先週の土曜日に掲載したように期待薄であると言わざるを得ません。ゲームチェンジャーであったワ クチン接種ですが、デルタ株という新たなゲームチェンジャーが出現したことによって状況が変わってしまったようです。

札幌医科大学のサイトからの引用です。横軸はワクチン完全接種率、縦軸は人口 100 万人あたりの 感染者数です。例として引用したのが、イスラエル(緑線)、イギリス(オレンジ線)、アメリカ(紫線)です。いずれも各国ともワクチン接種の進展とともに感染者率が低下してきましたが途中から上昇に転じています。理由はデルタ株の出現です。いろいろ理由はあるのでしょうが、事実は事実です。デルタ株の前には感染抑制という点においてワクチンの効果は不十分と言わざるを得ません。

ただしこれをもってワクチンの効果を全否定するものではありません。重症化防止効果は否定されたわけではありません。ワクチン接種のメリットは間違いなくあることだけは強調しておきたいと思います。

さてワクチン接種も感染拡大抑制の切り札にならないとすればどうすればよいのでしょうか?それはや はり人流抑制に立ち帰るほかはないのではと思います。今回の緊急事態宣言にあまり効果がみられていないのは、自粛疲れとオリンピック気分で人流が抑制されないからだと言われています。私が今提 供できるのは、東京都18カ所、埼玉、千葉、神奈川 3県の12カ所の休日の15時台の人出のデータ だけしかありませんが、このデータからでも、今回の緊急事態宣言において人流が抑制されていないことがわかります。(データはアグープのコロナ特設サイトからの引用です)
このグラフでは、休日の人出しかデータがありませんが、今回の第4次宣言では、これまでの第2次、 第3次と比べて人流の抑制が効いていないことがわかります。とはいえ、じわじわと人流は下がりつつあり若干の期待をいだかせるものです。


この人流と実効再生産数の関係を見てみましょう。下のグラフは感染者数から計算した実効性生産数の推移です。

乱暴な推論であることを承知であえて書かせていただくと、第2次も第3次も宣言発出直後に実効再生産数が 1.0 を下回り(赤の点線(1.0)を下回り)それがしばらく続きました。感染者が減少傾向になったということです。この時の休日の東京の人流はといえば感染前の 50%を下回る程度にまで減少しました。つまり、感染が減少傾向に向かうには人流が感染前の50%以下に減少する必要あるということにはならないでしょうか?

ただし、今の感染の主流はデルタ株です。第2次、第3次の時とは違い感染力がより強大化しているので、さらに人流を減らさなければならないでしょう。そうしたデータは政府であれば容易に収集できるでしょうし、すでにもっているのではないかとさえ思います。今政府はじめ行政がなすべきことは、データを的確に示し、今の人流では感染を減少傾向に向かわせることは難しいと思われることを表明し、期間と目標を定めて集中的に人流を減らすための協力を国民に訴えることではないでしょうか?

菅首相はいまだにワクチンが進めば感染者が抑制できると信じているようですが、実際のところはどうなのか、デルタ株にはワクチンが(感染抑制、入院者抑制、重症化抑制に対し)どの程度効果があるのか、明日データをそろえて紹介したいと思います。

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