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かんとこうブログ

2024.05.10

報道の自由ランキングの詳細その2

昨日の続きです。昨日は日本のスコアが先進国の中で最低の部類であるという事を書きました。今日はどうしてそのようなスコアになっているのかについてご紹介したいと思います。

昨日の最後にご紹介した5つの側面を評価する観点は下図のようになっています。

 

政治的背景では、国家や政治団体からの取材や報道への圧力や、取材受け入れの状況、政治問題をメディアが追及することへの国民の支持などが評価されます。

法的枠組では自由で公平な取材や発表の法的な枠組みが存在しているかどうかが問われます。

経済的背景では、経済面からの取材や報道への圧力がないことが求められます。

社会・文化的側面では、人種やジェンダー、宗教などの観点から自由で公平な取材や報道が保障されているか、そして安全性ではャーナリストが、その活動を理由に身体的危害や脅迫や中傷を受けていないか、が評価されます。 

さて日本についてどんなコメントが書かれているのかですが、少し意外な印象でした。順番にご覧ください。

日本についての総論とメディア環境です。総論では、日本は民主主義国家であるが、政治的、社会的に制約がありますよと書かれています。メディア環境では、日本の新聞とテレビ局は5大メディアが君臨していると書かれており、さらにNHKは世界最大の公共放送であると書いたります。ここまで読んでもあまり特別な印象を持ちませんが、実はこうした記述は日本には問題があることを指摘している伏線であることが、この先を読むとわかります。

これらが日本の5つの側面に関する記述の全てですが、青字の部分が、読んで「おや?」と思ったところです。言い方を変えると日本の点数が悪いのはそういう理由なのかとわかる部分です。

政治的背景では、「安倍政権誕生以来、ジャーナリストたちは不信と不満を募らせてきた。記者クラブの存在がそこに属さないジャーナリスト達を排除している」と書かれています。法的枠組では、「今年から国家安全上の重要施設付近へのアクセスが制限され、特定指定秘密保護法の改正があった」ことが書かれています。もちろん、こうした動きは報道の自由に対してはマイナス評価にしかなりません。

さらに、経済的背景では「日本は新聞と放送局の同時所有を規制していないため、メディアの極度な集中が見られている」とあります。社会的背景でも、「政府や企業が主流メディアに圧力をかけている結果、報道が自己検閲を行っている」と書かれています。安全性についても「比較的よい」としながらも、「政治家から名誉棄損で訴えられたこと」や「ネット右翼による嫌がらせ」に言及しています。これらだけを読むとなるほど日本は先進国にはあるまじき「報道の自由後進国」と言われそうです。しかし個人的には、確かにそうしたことは事実には相違ないであろうが、全体からみれば報道の自由はそこそこ守られているのではないかと思えるのです。

先にスコアの評価は、メディアやジャーナリストに対する人権侵害の定量的集計とアンケートの回答に拠って評価されるているとご紹介しましたが、実は5つの側面のほとんどはアンケートの回答によってのみ評価されており、安全性の1/3だけが人権侵害の統計数値によって評価されているにすぎません。日本からの回答がどのくらいあったのかわかりませんが、回答の中に上記の問題指摘があったことは間違いないものを思われます。日本のジャーナリストが、上述の問題を報道の自由に対する侵害であるとアンケートの回答で指摘しているということです。

2010年の民主党政権時代に12位という最上位を記録したことがあると書きましたが、調べてみるとその当時のスコアは現在と全く異なっており、非常に大まかな評価であったようです。その後しばらくは人権侵害の有無に関する評点が全体スコアから独立して公開されるようになり、さらに現在のような5つの側面の数値が公開されるようになったのは2022年からだということがわかりました。従って民主党政権時代は報道の自由が保障されていて現在は報道の自由がなくなったという結論は早計であると言わざるをえません。

今回のランキング発表について残念に思うことは、日本での報道がすべて外国の通信社からの情報を伝達するという内容であり、それに対し、自社の見解を述べている報道機関がなかったことです。ジャーナリスト個人では問題を指摘できても、会社としては指摘できないのであれば、報道の自由という観点からは良い点数がつかないのは仕方ないことかもしれません。

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