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かんとこうブログ

2026.04.20

ホルムズ海峡封鎖が示唆するもの・・塗料原料としての石油化学製品について

金曜日の夜にイランのアラグチ外相が、レバノン-イスラエル停戦中のホルムズ海峡封鎖を表明し、ついでトランプ大統領もそれを追認し、停戦中におけるホルムズ海峡の自由航行が実現しそうな状況です。そしてこのまま停戦が続ければ、自由航行できる期間が延長され1カ月半にも及んだ大騒動も落着となるわけですが、そんなにうまく行くかどうかtと思っていたら、案の定イラン革命防衛隊はホルムズ海峡封鎖継続を表明し、事態はまた先の読めない状況に戻りました。

それはさておき、この騒動の中で原油の精製プロセスや石化製品の製造フローなどについて調べているうちに、とても大切なことに気がついた気がします。それは、石油由来製品が次第に減少していきいずれなくなってしまうのではないかということです。なんだそんなことかと言われるかもしれませんが、正直に言ってしばらくの間このことを忘れていたような気がします。

中学生の頃に、石油はあと30年たてばなくなってしまうと言われとても不安に思った記憶があります。その後新しい油田が次々とみつかり、シェ―ルガスが出現し、なんとなく石油が有限の資源であることを忘れていました。しかし、現時点でも石油は有限の資源であり、採掘可能年数は50年あまりとなっています。(下図)以下主として石油連盟の資料を中心に引用させてもらっています。

しかし、この度私がいずれ石油由来の塗料原料がなくなってしまうと思ったのは可採年数のせいではありません。日本における原油書処理能力の減少、より正しくは石油製品の国内需要の推移を見たときにそのように思ったのです。

まず原油処理能力からみていただきましょう。1975年、1980年をピークに原油処理能力は縮小の一途です。2024年度ではピーク時の半分ほどに処理能力となりました。

この間の推移は単に処理能力の大きさだけではありません。精製により石油から得られる成分も時代につれて変化しています。

この変化を一言で言えば、より軽質成分が多くなるように、原油の種類や精製法を変えていったということのようです。この50年ほどで、軽質成分(ガソリン+ナフサ)が22.8%から40.5%に増え、中間4品(ジェット燃料、灯油、軽油、A重油)も24.6%から47.7%に増えました。一方で重質成分であるB/C原油が44.3%から8.4%にまで減りました。そして塗料屋として気になるナフサ成分は一時、比率が減少しましたが、このところは10%弱をキープしているようです。

この「今日の石油産業」では、さらに国内需要の推移の変化として下図が載っておりますので、上図の生産得率の変化は、需要が変化したために、それぞれの成分比率を需要に合わせて変えざるを得なかったのではないかと思うようになりました。

さてここで大切なことは上の図と下の図を比べていただき、ガソリンとナフサの比率が異なることです。上の生産得率では、ガソリン:ナフサ≒1:0.3ですが、下の需要の図では、1:0.78となります。

石油会社の精製ではガソリンが最重要物質です。ですから実際の原油精製では基準がガソリンの産出量であり、ガソリンを基準に精製すると、需要に見合うだけのナフサを得ることができないという計算になります。つまり今の原油精製では、どうしてもナフサが不足し、その不足するナフサを補うため多量のナフサを輸入しなければなりません。今回のケースで言えば、いくら備蓄原油を放出してもらっても、それだけでは輸入ナフサの分は補ううことができないのです。

さらに国内需要の総量を見てみると、石油製品全体では1999年を、ガソリンで量は2004年をそれぞれピークに需要が減少傾向にあります。しかしこれは自動車の保有台数が減少しているせいではありません。自動車の保有台数はむしろ僅かですが毎年増加しています。(下図)

ただし、燃費の向上やハイブリッド車やEV車の普及(下左図)により、ガソリン生産量は上の図においても、最近8年間(下右図)で見ても減産傾向にあります。

これからハイブリッド車やEV車が普及すればするほど、燃費が向上すれば向上するほど、ガソリンの需要は少なくなり、日本における原油精製量も減少し、それに伴いナフサの生産量も少なくなります。そうなればナフサについてはよりに依存しなければならなくなるでしょう。

さらにこれから厳しくなると思われるのは、ナフサの主用途であるプラスチックの需要です。代表的なプラスチック原料でありエチレンも、2000年代前半をピークに生産量が減少しています。そしてもっと大事なことには、この推移が先ほどのガソリンと連動しているように見えることです。極端な想像かもしれませんが、エチレンの生産において国内生産ナフサは需要な要素であり、その生産量は原油精製に、もっと言えばガソリンの需要に連動しているのではないかと思われます。

となると、現在塗料原料として使用している多くの物質の供給が、ガソリンの需要量に影響される可能性があります。そうであれば、将来の塗料原料もガソリンの需要減少とともに、減産され価格も高騰するのではないかという懸念があります。また、ガソリンが減産になれば輸入ナフサへの依存度は高くなることになります。バイオナフサがあるから大丈夫という方がいるかもしれませんが、植物油やその廃油を原料する場合に、エチレンやプロピレンはできてもトルエンやキシレンはできるのかという懸念があります。

今回のホルムズ海峡封鎖で、過度の中東依存、石油依存が如何に原料の安定供給上問題があるか骨身にしみました。トルエンやキシレンでさえ、他の溶剤や樹脂原料も含めて、塗料に使用されているナフサ由来の原料は、ナフサ分解成分の中での主要な用途先ではありません。ナフサの供給がタイトになったときに優先して石化工業が生産してくれるものではないと想像されます。ただでさえ、VOCに対する世間の目はCO2排出の観点からもっと厳しくなると思われます。単に環境問題としてだけではなく、原料の安定供給、さらには価格高騰必至という面からも、塗料業界はもっと自主的に脱石油、脱ナフサの方向へ舵を切ってもよいのではないかと思う次第です。

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