かんとこうブログ
2026.06.02
トルエンの4月出荷数量と輸出入量の関係について
5月29日の弊ブログで、「4月の経産省速報から塗料のサプライチェーンを辿ってみると・・・」という記事を載せました。これに対してコメントを頂戴いたしました。その内容についてはなるほどと思いましたので、調べてみました。今日はその内容をご紹介します。
いただいたコメントは、トルエンの出荷量が異常に少ないことについてでした。関連する図表とともにご紹介します。

ブログの中で、4月のトルエンの出荷数量があまりに低い(前年同月比32.8%)ので考察から除外すると書きましたところ、それは輸出入の影響があるのではないかというご指摘をいただいたということです。
上に並べた5品目のグラフの中で、トルエンはベンゼンともキシレンとも異なる動きで、4月の出荷数量が著しく低くなっていることに関してのご指摘でした。
トルエンの輸出入に関しては、できるだけオリジナルデータを載せたかったのですが、見つけることができず、代わりに「LOGISTICS TODAY」というサイト(下記URL) に財務省貿易統計および経産省鉱工業指数から引用した輸出入のデータがありましたので、引用して紹介させていただきます。
https://www.logi-today.com/958275

2025年4月、2026年3月、2026年4月におけるトルエンの輸出入の比較データで、それまでほぼ輸出のみであったのが、2026年4月に突如として輸入のみに転じたことが示されており、輸入量は約9000トンでした。(2026年4月の出荷量は約23000トン)
そしてさらに同サイトでは、4月のトルエン出荷量が大幅に減少しているにもかかわらず在庫量が増えていると指摘しています。これを単純に考えれば「目詰まり」にあったります。もちろん詳しい事情はわかりませんので、軽々に断じることはできませんが、表面上はそう見えるということです。下図で見ると2026年4月は出荷数量が67.3%減であったのに在庫量が27.3%増となっていることを示しています。(同じく「LOGISTIVTODAY」より引用)

2026年4月のトルエンは出荷量、輸出量が少なく、輸入量が増えたということですが、因果関係でいうのであれば、出荷量が少なくなり、市場のトルエンがひっ迫したため、輸入を行って対応したというのが最も合理性の高い説明ではないかと思います。
トルエンの用途先に関する定量的なデータは見つけられませんでしたが、一般的には塗料やインク、接着剤などの溶剤、TDI(トルエンジイソシアネート)の原料、不均化反応によるベンゼン、、キシレンへの転化が挙げられています。トルエンの通常の出荷数量は2025年の月平均で55,218トンでした。2026年4月は23,188トンであり、輸入量は8,931トンでした。ここからはさらに単なる推測の域をでませんが、4月になって急速に出荷数量が落ち込む中で、塗料製造者はじめ、トルエンの購入者はやむなく輸入トルエンを求めたのではないかと思われます。
因みに、塗料およびシンナーにどのくらいの量のトルエン、キシレンが使用されているかですが、これは日塗工のVOC推計から推定するしか方法がありません。2024年のデータですが、塗料と希釈用シンナーを合わせた量で、2113トン/月、洗浄用をこの2割程度と多めに見積もっても2540トン/月になります。トルエンの出荷量は上述したように2025年の月平均で55,000トンほどでしたので、塗料関連用に使用されているのは、わずか4.6%ほどになります。
同様にキシレンについても塗料と希釈用シンナーを合わせた量は3153トン/月,洗浄用をこの2割と見積もっても約3780トン/月になります。キシレンの出荷量は2025年の月平均で127,448トン/月となりますので、こちらも3.0%ほどになります。トルエンもキシレンも全体から見ると塗料用途は決して大口の需要ではありません。従って数量的見地からは優先されるべき需要先ではないということになります。
さらに4月の輸入が増加した理由の一つは運賃をカバーしてあまりある価格の高騰があります。通常のトルエンの価格は100円/Kgをわずかに上回り高くても120円/Kg程度です。海外からの輸入となれば当然運賃がかかります。最も安価な方法は船で運ぶことですが、海上以外は陸送になりますので、輸送コストはかなりの額にのぼり、通常はとても割にあいません。しかし今は紛れもなく非常時であり、法外な価格でも買ってもらえる可能性が大きいため、このような現象になったのではないかと想像しています。
注記:6月2日掲載時の塗料と希釈用シンナーに含まれるトルエン、キシレンの数量が間違っておりました。同日11時46分に訂正いたしました。申し訳ありあせんでした。