かんとこうブログ
2021.08.19
WHOとイスラエル保健省の意見は対立しているのか?
昨日の夜遅く、ロイターからのニュースでイスラエル保健省が、「3回目接種が86%の予防効果を発揮している」と発表がありました。一方で、8月19日付の発表でWHOは、「今の時点で3回目接種の必要はない」とコメントしています。この見解の相違はどこからくるのでしょうか?素人なりに整理してみたいと思います。
まず昨晩のニュースからです。(下記URL)
まとめると下図のようになります。
3回目接種をうけて1週間以上たった60歳以上の人と、2回接種をうけて数カ月たった60歳以上の人についてある一定期間の(PCR検査の)陽性者数を比較すると大きな差があり、3回目接種の方が圧倒的に少なかったというものです。しかし、これを見ると首をかしげたくなるところが2カ所ほどあります。
一つ目は、陽性者率が低すぎることです。イスラエルは最近の過去7日間の新規感染者が100万人あたり5000人以上出ています。100万人あたり5000人というのは0.5%にあたります。対象者を60歳以上に限定していることを考慮しても、今回発表された試験結果はかなり短い期間のものであると推定されます。そのように短い期間の結果をなぜ急いで発表したのかわかりません。
二つ目は3回目を接種したばかりの人と、2回目を接種したから数カ月たった人を比較していることです。先日のデータを再掲しますが、イスラエル保健省自身で、接種後時間が立てば感染阻止率は低下することを示しています。接種したてと接種後時間が経過してからを比較するのは、フェアな比較とは言えません。もし、この比較に意味があるとすれば、「現状イスラエル国民の多くは2回目接種後かなり時間が経過してワクチンの感染阻止能力が低下しているでしょうから、そういう人たちに3回目接種を行えば感染阻止に大きな効果がありますよ」ということだけです。
一方で、WHOは「2回接種済みの人でも感染した例はあるものの「重症化や死亡例を明らかに減らしている」として、感染力の強いデルタ株にもワクチンは効果を発揮している」と強調したということです。WHOとイスラエルの見解の相違、実はそう矛盾していないと考えています。WHOもワクチン2回接種済でも感染することがあることは認めていますが、あくまでワクチン本来の効果である重症化防止の効果はデルタ株といえども発揮されているので、あわてて3回目を打つ必要はないという立場なのです。一方でイスラエルは、そうはいっても感染者の数が急激に増加しており、感染者をできるだけ減らすという観点から3回目接種を推奨したいという立ち場であると思われます。
さらにもう一つ立場の違いがあるとすれば、ワクチンの種類です。イスラエルは基本的にファイザー社製です。しかしWHOは立場としてすべてのワクチンを念頭において話をする必要があります。ファイザーやモデルナ、アストラゼネカだけでなく、中国製やロシア製も頭に入れて発言をしているのではないかと思います。
ワクチンは万能ではなく、本来の目的は重症化の防止だったはずです。たまたま感染防止に効果があったために、あたかもすべてを解決してくれるゲームチェンジャーのように誤解していたのかもしれません。ワクチンを語るときには、ワクチンのどの効果についての話なのかを明らかにした上でないと混乱を招きかねません。短期間の結果とは言え、3回目接種で観戦防止にも効果があるというのは朗報には違いありませんが、政府の一部にはまだ、ワクチン(2回接種)の進展で感染が収束するという見方があるようです。そうした期待はデルタ株の登場により、イスラエルの例からも否定されています。ワクチンで感染拡大の収束を狙っているのであれば2回接種だけでは不十分であると懸念します。