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かんとこうブログ

2022.05.17

2022年1~3月期塗料会社の決算 その2 日本ペイントホールディングス

今日は昨日の世界のTOP3に引き続き日本ペイントホールディングス(以下日本ペイントHD)の決算内容についてご紹介します。今回この会社だけ単独でご紹介する理由は、ほかでもありません、今年度に世界のTOP3に割って入ることができそうな状況にあるからです。2021年度TOP3の中で日本円に換算して最も売上金額が小さかったのはAkzo Nobel12460億円(9587001€130円)でした。このAkzoNobelは世界で最初に1兆円企業となった塗料会社でしたが、その後はPPGSherwin Williamsに抜かれ、このところ3位が定位置になっており、大きな買収案件もありませんでした。今年もそのままならば、日本ペイントHD2022年度予算における売上金額12000億円からみるとAkzo Nobelに手が届くのではないかと勝手に思っておりました。 

このところウクライナ侵攻があり、円安が急激に進みましたので、日本企業にとって売上金額の多寡を争うには不利な状況になっています。果たして日本ペイントHDの第1四半期の売上はどうだったのでしょうか?

短信ベースでの売上は2841億円でした。昨日ご紹介したように、Akzo Nobel1Q売上の日本円換算金額は3397億円(1€134.54円)でした。この先どうなるか為替次第の面もありますが、このままだと少し届かない感じです。

前年比での売り上げの増減分析では、数量で1%、価格と製品構成で7%、塗料以外の製品で4%、塗料周辺事業で1%、為替で4%のプラスになっていますが、何と言っても大きいのは新規連結の11%プラスでした。昨日のTOP3と比べると数量でアップしている点は評価されると思いますが、反面製品値上げについては、TOP3に比べて値上げ幅が小さいようです。

日本ペイントHDの決算内容の発表は、大変丁寧に細かな内容までデータを開示してくれています。特に地域別のデータは事業別にも売上の数字が提供されています。反面、セグメント別(日本ペイントHDの表現では事業別)の営業利益と利益率は開示されていません。これについては、実は日本ペイントHDのコーポレートガバナンスの在り方に由来でしているのではないかと思っています。自ら「アセットアセンブラー」と称しているように、世界統一ブランドを前面に押し出して販売を進めるのではなく、グループ各社が自主的な裁量のもとに拡販を進めていくスタイルをとるのであれば、事業別の採算性よりも地域別、会社別の採算性の方が重要であり、管理すべきは地域別、会社別の採算性ということになるのかなと思います。ということなので次に地域別売上、営業利益、同利益率についてご紹介します。

トータルとして見ると増収減益基調のなか、日本だけは微減収大幅減益となっています。ただし、この大幅減益の最大の理由は、右側で説明している本社費用の負担が大きいのではないかと推測しています。昨年の1Qに公表された調整(本社費用)と今期の調整の比較から、今期から日本セグメントで負担するようになった本社費用は45億円程度ではないかと思われます。45億円とすれば、今季公表の日本セグメントの利益である3億円と合計すると営業利益は48億円となり、前年比はむしろ若干の増益となります。これはあくまで推測ですので本当のところはわかりませんが、今年1年は日本セグメントの利益の評価はこうしたことを考慮して評価する必要があります。

売上、営業利益、同利益率の前年比を下図にグラフ化しました。

NIPSEAインドネシア、Betek Boyaが営業利益金額が前年比でプラスでしたが、営業利益率でもプラスだったのはBetek Boyaだけでした。やはり全般的に見れば原料の逼迫や高騰に苦しめられているという状況は昨日のTOP3と同じであると思われます。

次に各分野の需要動向を見るために事業別・地域別の売上データを下図に示します。

前年と比較するのが目的なので実質ベースの数値を使用しています。汎用は全地域で増収ですが、自動車用は日本で減収、工業用は中国で減収となっています。単純に計算すると全地域の合計としては自動車用は8億円の減収、工業用が56億円の減収となります。ちなみに日本ペイント全体の事業別構成比は、2021年度の売上数値として下図のようになっており、自動車用は全体の13.3%工業用は8.5%に過ぎません。汎用が全体の6割を占めており、かつ上表から見て汎用の中で中国が占める割合は半分以上ありそうです。全体の3割以上が中国の汎用になるわけですが、その中国の汎用は前年比で23%増でしたので、全体の売上が実質ベースでも二桁の増加になっているわけです。

最後に各需要分野の1Q実績と2Qの予想を示します。2Qの自動車用については、日本ではやや回復傾向ですが、中国では厳しいという予想です。また2Qの建築については、日本は回復傾向、アメリカは好調持続、その他の地域はやや軟調という予想になっています。

1四半期が終わった時点で、日本ペイントHDの売上は少しTOP3から離されていますが、この先どのような展開になるのでしょうか?注目していきたいと思います。

明日は、日本の上場企業の2021年度決算の内容についてご紹介します。

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