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かんとこうブログ

2022.06.03

関西ペイントのアフリカ事業売却とそのランキングへの影響

 61日に関西ペイントが、アフリカ事業をオランダのAkzoNobel社に4億5000万ドルで売却すると発表しました。これをうけて翌日の株価は終値で171円高騰しました。今日はこの売却の概要と、これがトップ企業のランキングに及ぼすであろう影響について書いてみたいと思います。

さまざまなネット報道から、気になったものを集めて一覧にしてみました。おおよそこのように集約できるものと思います。

本件の中核は、真ん中の囲みの中の通りで、「アフリカにある2子会社をオランダの同業大手アクゾ・ノーベルに計45000万ドル(約585億円)で2023年内に売却する。」というものです。売却に至った背景としては、左上の囲みにあるように「2010年代からアフリカ地域の景気減速や通貨安などで事業環境が悪化し、213月期まで6期連続の経常赤字が続いていたこと。「日本から経営管理する難しさもあった」ことが挙げられ、「塗料業界は大型M&A(合併・買収)などによる業界再編も進み、競争が激化している」ことが業界事情として挙げられています。今後同社は右上の囲みにあるように「厳しい経営環境を踏まえ、強みのある欧州、インドなどに経営資源を集中させる。」としています。

これに対して投資家は下の囲みにあるように、好感を持って反応しており「ポジティブサプライズ」とみて「投資判断、目標株価も引き上げ」ました。さらに今後の方針としての「自社株買いによる株主還元」も評価され昨日の株価高騰に至ったようです。

ここまでが売却発表から株価高騰までの動きをご紹介しました。本サイトは言うまでも株式投資サイトではありませんので、ここに取り上げた理由は他にあります。それが表題に書いたトップランキングへの影響があるのかどうか?ということです。関西ペイントもAkzoNobelも両者とも世界のトップ10に入っている会社であるだけでなく、今年は日本ペイントがAkzoNobelに追いつくかもしれないという可能性がある状況であり、金額的にはさほど大きくはないと思いつつもその影響が気になりました。

売却の完了は2023年度中とありましたので、実際に新しい連結対象に組みかえられるは2年後になるものと思いますが、仮に2021年度あるいは2022年度中に連結の組み換えが行われたらどのような影響があるかを計算してみました。その結果を下に示します。

この表の会社の並び方は2021715日にCoatings World誌が発表した2020年のランキングに従っています。US$換算の順位になっていますので、為替の影響も受けています。あとひと月もすれば、新しいランキングが発表されるのでそれを待ちたいところですが、間に合いませんので、各社のホームページから2021年度決算における売上数値を引用しました。為替は各社会計年度の最終日のレートを使用しています。こうして2021年のUS$換算の売上金額が計算できました。ただし、BASFCoating部門が会社として独立していないだけでなく、Surface Technology部門のさらに一部門という位置づけで塗料だけの売上は調べきれませんでした。

アフリカ事業売却のインパクトは、売却金額の45000万ドルではなく、2021年の売上である361億円で計算すると約3億$となります。3億$は表中の数値の単位である10億$で表せば0.3となります。小さな数字ですので、2021年についてみれば、仮にこの売却があったとしても順位に影響を与えることはないと推定できます。ただし、関西ペイントは、この売却とは関係なくその下のAsian Paintに売上では抜かれてしまう可能性が大であると思われます。そのほかの順位の変動への影響はありません。

また始まったばかりの2022年はまだ多くの会社が第1四半期を終えたところなので、この数値を4倍して計算してみました。日本ペイントは先日、中・東欧での買収を発表しましたし、2021年の売上目標は12000億円としていますので、まだまだAkzoNobelとの差を縮めていくものと思われます。いずれにしてもこの両社の競争において今回の関西ペイントの売却はさほど大きな要因にはならないであろうと思われます。

一方、関西ペイントについては、売上の約1割が減少するので、影響は小さくはありません。2021年にAsian Paintに抜かれることは確実でしょうし、自動車用の回復状況次第では売却が完了する2023年にはJotunにも抜かれてしまうかもしれません。もっとも、もう売り上げを競う時代でもないでしょうし、経営内容の改善こそ重要と考えての売却ではないかと推測しています。

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