かんとこうブログ
2022.11.08
IEA 世界エネルギー見通し2022 エグゼクティブサマリー その2
昨日の続きです。
今日はいよいよ各国から提出されている計画について、それらがそのまま実行されたら将来のCO2排出量は、そして気温上昇はどの程度になるのかということをご紹介します。
⑤昨日ご紹介したように化石燃料の使用にはピークが見えてきました。各国から提出されている最も具体的な「明言された政策シナリオ」によれば、電気自動車の普及により石油も2030年代に横ばいとなり、2050年には減少に転じることが予想されています。
⑥またこれまでほぼ固定化されていた世界のエネルギーにおける化石燃料の割合が、減少するという予想ができるようになりました。最も具体的な「明言された政策シナリオ」によれば、世界のエネルギー関連のCO2排出量は2050年には大幅に減少することが予測できるようになりました。しかしながら、この最も具体的な「明言された政策シナリオ」の計画だけでは、気候変動による深刻な影響を回避するには不十分であることも明らかになっています。
⑦2番目の分類である「発表された誓約シナリオ」に従って計画が達成されていけば、さらにCO2の排出と気温上昇の抑制ができます。「発表された誓約シナリオ」が完全に実施されれば2100年の温度上昇が1.7℃に抑制できます。ただし、それでも当然ながら「ネットゼロシナリオ(2050年に排出ゼロ)にはまだ及ばないとしています。
ここで各シナリオによって達成できるCO2の排出抑制のグラフを見てみましょう。
どうでしょうか?正直に言ってここまで各国政府がコミットしているとは思いませんでした。「ネットゼロシナリオ」には及ばないとしてもすでにかなりのCO2排出抑制をできるだけの計画が提出されているというのは驚きとともに感激しました。
以上がサマリーの概要です。これ以外に興味を覚えたデータ(主にロシア関係)がありましたのでそれらをご紹介します。
上の図は二つともロシアのエネルギー輸出の動向を予測したものです。これらの図は2021年時点での予測に2022年の予測を描きたしたもので、赤い色の部分が2021年の予測からの減少分にあたります。左のガスについては主たる輸出先であるヨーロッパがなくなるため2030年には2021年の半分程度になると予測されています。石油に関しても同様に大きく減少すると予測されています。
左図は世界のガス貿易の変化をしめしたものですが、パイプラインでは、ロシアからヨーロッパへの輸出が大きく減少し、一方で中国への輸出先が増加しますが、その量はヨーロッパ分と比較にならないほど少量です。ヨーロッパはロシアから輸入していた分をアメリカ、中東など他の地域から輸入する予定ではありますが、完全に量を確保するには2‐3年はかかるのではないかとの予測でした。
世界全体の天然ガス需要については、先進国で減少、新興国で増加、トータルで横ばいという予想になっています。
以上がエグゼクティブサマリーの要約です。各国の計画が思った以上に提出されていることに感心した反面、計画が完全に履行されることへの不安も感じます。いずれにせよ2050年カーボンニュートラルは大変なチャレンジであることには変わりありません。