かんとこうブログ
2023.04.27
財務省貿易統計令和4年度分速報について その1
先日財務省から令和4年度分の貿易統計(速報)が発表され、統計を取り始めて以来の最大の輸入超過であったと報じられていました。今日と明日はこの貿易統計の内容にについて調べたことをご紹介したいと思います。本来財務省から国別や品目別の細かな解析が発表されているようですが、速報の段階では概要のみの発表ですので、素人の解析も多少は参考になるのではと思いいろいろグラフを描いてみました。
まず、このところ13年間の輸出入金額と収支の推移です。
左が輸出入額、右がその収支です。かつての貿易黒字大国はどこへやらこの13年間では、年間の貿易収支が黒字であったのは4回しかありません。いわば貿易赤字が常態化しつつあるのですが、それにしても令和4年度の赤字の大きさは、これまで最大であった平成25年(2013年)の赤字を大幅に上回る規模であることに改めて驚きます。これはウクライナ侵攻に加えて大幅な円安が拍車をかけたこと、世界的なインフレなど複合要因によるものですが、2022年度の月別の推移を大幅輸入超過の要因と考えられる為替や鉱物性燃料(石油、石炭、液化天然ガス)の価格動向とともに見ていきたいと思います。
この図を見ると4月以降に輸出と輸入の差が拡大し、今年に入り急速に差が縮小しています。(緑の点線で囲んだ部分)こうした輸出入額の推移に大きな影響を及ぼすと思われる為替($/円の指数)と鉱物性燃料の価格指数についてその推移を下図に示します。
左が為替($/円の指数)、右が鉱物性燃料価格の指数の推移です。いずれも令和4年4月を基準(1.0)にしていますが、為替($/円)は令和4年度を通して4月の数値を上回り、最大では1.2近くまで達していました。一方鉱物性燃料も全般に高い数値を取っていますが、原油価格は7月以降4月の数値を下回っており、今回の輸入超過の最大の要因ではありません。因みに鉱物性燃料輸入額は輸入額全体の122兆円の約3割にあたる35兆円あまりであり、そのうち原油はさらにその1/3程度ですので輸入全体から見ると約1割程度ということになります。
これに対し、為替は全体に影響を与えると推定されますので、インパクトの大きさは石油の比ではありません。輸入超過の陰に隠れていますが、令和4年度の輸出額も史上最高の額であったそうです。この輸出額が大きくなったことにも為替が影響していることは言うまでもありません。
以上が貿易統計の概要ですが、速報内容にはもっと詳細なデータが公表されていますので、国別や品目別のデータもご紹介していきたいと思います。この何年も詳細に見たことがなかったので、国別内訳や品目別内訳はかつてのイメージとは全然違う様相になっていました。では国別からです。
貿易の最大の相手国は昔アメリカ、今中国と思っていましたが、令和4年度の最大の輸出先はアメリカでした。と言っても中国との差はわずかでしたので、コロナによるロックダウンという中国の特殊事情を考慮すれば中国が実質的に最大の貿易相手国であることは変わらないとも言えます。輸出先上位は、アメリカ、中国、韓国、台湾、香港であり、一方輸入元上位は、中国、オーストラリア、アメリカ、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビアとなっています。やはりアジアの国との貿易が多くをしめていること、それから輸入は鉱物性燃料の大口輸入国が多いことがわかります。
ざっとみるだけで、国別収支では、日本から見てアメリカは輸出超過、オーストラリア、UAE,サウジアラビアは輸入超過とわかりますが、そのたの主要相手国との収支はどうなっているのでしょうか?下図に国別収支を示します、
輸出超過国はその超過額の大きい順に、アメリカ、香港、韓国、シンガポール、台湾、インド、タイでした。アメリカを除くとすべてアジアの国がならびます。一方輸入超過国はその超過額の多い順に、オーストラリア、中国、UAE,サウジアラビア、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ドイツという順でした。資源関係の輸入国が目立ちます。
とここまで見てきましたが、国別の収支などについて皆さんのイメージ通りだったでしょうか?品目別などについて明日に続きを書きます。