かんとこうブログ
2024.11.26
自己修復するコンクリートを作った会社はとんでもなくぶっ飛んでいた!
先日テレビで自己修復するコンクリートというものが紹介されていました。自己修復するプラスチックはずっと以前から研究対象となっており、当然自己修復する塗膜というものも何度か話題になっています。最近では擦り傷が自己修復する自動車用のクリヤー塗膜というのは話題になった記憶がありますが、恒久的に自己修復するというのはまだまだ難しいように感じています。
この自己修復するコンクリートは、曾澤高圧コンクリートと言う会社が開発したもので、国交省のNETIS(新技術情報登録システム)に登録された素晴らしい技術です。同社のホームぺージ(下記URL参照)にこれもすばらしくわかりやすい説明がありましたので、そっくりお借りしてご紹介したいと思います。
https://www.aizawa-group.co.jp/news2022081801/
この自己修復技術の主役は、Basilisk HAと名付けられた特殊なバクテリアです。耐アルカリ性を有し、コンクリートの中で冬眠状態で存在することができます。コンクリートにクラックが生じると侵入してくる水や酸素によって覚醒し、コンクリート製造時に添加されているポリ乳酸から生じた乳酸カルシウムを餌をして、炭酸カルシウムを生産し、クラックの隙間を埋めて修復するという仕掛けです。修復が終われば、水や酸素が遮断されますので、再び休眠し次の修復に備えるとされています。
なおこのBasiliskとは、ギリシャ神話に出てくるトカゲの怪獣で尻尾が切断されても再生することからこのバクテリアに対し命名されました。このバクテリアは、もともとオランダのデルフト工科大学のヘンドリック・M・ヨンカース博士が見出したもので、博士は2006年に自己治癒型コンクリートの研究を開始し、2010年には自己治癒型コンクリートの試作に成功しています。同時期に曾澤高圧コンクリートでも納豆菌を用いて同じ目的の研究を行っておりましたが、Basiliskの優位性を認め、2016年にこのバクテリアの使用権を管理するBasilisk社と日本における独占販売権の契約を結び現在に至っています。(日本風力エネルギー学会誌 Vol.44 No.2)
以上が概要ですが、曾澤高圧コンクリートのサイトでは自己修復機能を以下の文章と図によって説明されています。
実際の建造物を使用した実験でも下図のように自己治癒したことが紹介されています。
こうした自己治癒作用により、コンクリート建造物のメインテナンスコストを大幅に削減するとともに、長寿命化させることが期待されています。しかし、この曾澤高圧コンクリートという会社の技術はこれだけに留まりません。
さらに、この会社はコンクリートにカーボンを添加すると、コンクリート内部に存在する細孔の周囲にカーボンが集まることを利用して発熱&蓄電コンクリートの実装も目指していました。
同社の新技術開発はさらに想像の範囲を超え、とんでもなくぶっ飛んでいました。同社が手掛けている瞠目すべきプロジェクトの数々の例を下図でご紹介します。これらのプロジェクトを貫く大目的は「脱炭素」です。
上から、液化CO2を使った低炭素コンクリート、型枠不要のコンクリート3Dプリンター、その3Dプリンターを可能にする大型ドローン技術、3Dプリンタで製造された浮体式風力発電/アンモニア製造装置、想像すらしていなかった未来型プロジェクトが並んでいます。
この取り組みについて、先述の日本風力エネルギー学会誌の中で、同社代表取締役社長の會澤 祥弘氏は、「コンクリートの原料となるセメントを 1 トン生産しようとすると、およそ 0.8 トンの二酸化炭素(CO2)が排出される。セメント由来の二酸化炭素排出量は全体の 7%前後に及ぶ。我々の産業は本質的に環境負荷が非常に高い」と述べています。つまりセメント業界は大変二酸化炭素排出量の多い業界であるため、この問題に取り組むのは業界の責任であり、「(自社の)す べての保有技術を「脱炭素」の目線で再編集しよう と試みている」と書いています。
技術的な視点の高さもさることながら、本当にぶっ飛んでいるのはこの精神かもしれません。塗料業界も見習うべきと考えます。