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かんとこうブログ

2026.04.28

ボールミルで化学反応を行う、しかも無溶剤で!

文芸春秋5月号でボールミルで化学反応を行える、しかも無溶剤で!という記事(表題はこれとは違います)を目にしました。ボールミルとは、言うまでもなく、メディアと呼ばれる鉄製または陶製の小球または小円柱体が充填された円筒形の容器をぐるぐると回転させ、均一化、粉砕、微粒化、ペースト化などを行う機器で、かつては塗料の分散工程でたくさん使用されていました。ぐるぐる回転している間は人手がかからず放っておけばよいので便利でしたが、結局トータルとしての工程時間が長くなってしまうなどの理由で、いまでは極めて特殊な用途にしか塗料製造では使用されていないのではないかと思います。

文芸春秋の記事は、これを取り上げた理由として、ホルムズ海峡封鎖により石油由来物質の供給が不安視されるなかで、化学反応の主体である溶液反応ではなく、溶媒を使用せず化学反応を行える注目の技術としてボールミルを使用した反応が紹介されていました。詳しい反応条件などは書かれていませんでしたので、研究者として名前が挙げられていた北海道大学の伊藤肇先生の研究室のサイトを訪ねこの反応について調べてみました。まずは、北海道大学のプレスリリースからご覧ください。

読んでいただければご理解いただけたと思いますが、溶剤の調整など厳密な管理が必須条件である難しい合成反応を、空気中でしかもほとんど溶媒(溶剤)を使用せずに合成することができた、ということです。このグリニヤール試薬というのは化学を勉強してこれら方ならご存知と思いますが、カルボニル基に作用して新たなアルキル鎖を形成させるための試薬(化学物質)で、R-MgX (R;アルキル基、X:ハロゲン)という構造式になります。

この試薬をボールミルで合成することができた理由に関しては、以下のように説明されています。

一つ目は、ボール(メディア)が金属マグネシウムに衝突し、表面の酸化被膜を削ることで活性なマグネシウムを露出させる(この反応は金属マグネシウムと有機ハロゲンの反応」二つ目は、反応を阻害する空気中の酸素や水分の量が固体反応混合物の中に入りにくいことに加え、反応容器(ボールミル)の容積が小さいために空気中の酸化や水分が相対的に少ないことが挙げられています。

とこれを聞くとどんなボールミルか調べてみたくなります。伊藤研究室のサイトに挙げられていた論文を調べると、使用されているボールミルの詳細がわかりました。試料の量は20mlまでで、言ってみればマイクロボールミルと言ってもよい大きさでした。素材は入れ物もボールもステンレスチ―ルでした。

グリニヤール試薬合成の場合は、金属マグネシウムが表面酸化しやすく、水に対しても敏感に影響されるため、こうしたボールミルによる合成が極め有利であったものと思われます。しかし探してみればこうした反応は他にもいろいろとあるはずで、世界中で研究が進められていると書かれていました。

かつて塗料でさかんに使用されたいたものとは大きさがずいぶん異なりますが、それでもボールミルが溶媒(溶剤)レスでの反応に有望であり、環境調和型の新しい物質生産プロセスの拡充が期待されると言われると何だかうれしくなります。

翻って塗料中に含まれる溶剤は、塗膜形成時に揮散し環境中に放出されるため好ましくないとされています。今回のボールミル合成を調べて、塗料中の溶剤が果たしている機能である流動性、粘性の保持、塗膜形成能などを、ボールミル合成のように他の手段で達成することができれば、塗料の将来展望はぐっと明るくなるのではないかと妄想してしまいます。イメージ的には、路面標示塗料のように熱溶融させた流動体を精密に塗工できれば可能性があるように思いましたが、塗料の最大のアドバンテージのひとつである3次元形状物に塗装できるという点には一工夫も二工夫も必要と思われます。

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