かんとこうブログ
2026.11.04
金属を含まない金属光沢材料について その1
10月27日付けの「塗料報知」の一面に今日の掲題「金属を含まない金属光沢材料」が載っていました。かなり詳しい説明が書いてありましたので、概要はそちらにお任せするとして、本ブログではもう少し材料そのものについての情報をご紹介したいと思います。
最初は、最初にこの研究を手がけておられた千葉大学の星野先生の研究について千葉大学が研究紹介としてリリースした資料から、この「金属を含まない金属光沢材料」を理解するのに適した4枚の写真からご紹介します。
https://www.chiba-u.ac.jp/research-collab/files/pdf/kogaku_6_hoshino.pdf

左上から、本ものの金(左)とガラスに塗装した金色調塗膜(右)、右上がPETフィルムに塗装した金色調塗膜、左下が塗布液の外観、濃青色の液が塗布により金色の膜になります。右下が、その金色膜の構造です。チオフェンという化合物の重合体が規則正しく配列して丈夫な構造を作ります。金属は一切含まれていません。このチオフェンについてはあとで詳しく説明があります。
どうでしょうか?大体どんなものか理解していただけたでしょうか?
さて今この研究は千葉大学の塚田先生の研究室に引き継がれてさらに進展を見せています。塚田先生の研究室の研究紹介から、この「金属を含まない金属光沢材料」の資料を引用させていただきます。

そもそもこの「金属を含まない金属光沢材料」は、導電性高分子の研究の中で見つかりました。材料はメトキシチオフェンというもので、それを酸化重合すると上図の右下部分にあるような重合体になります。このままでは水にも溶剤にも溶けませんが、水の場合には塩素イオンを、溶剤の場合には塩素酸イオンまたは4フッ化ホウ素イオンを加えて溶液化します。

研究室の資料には、「様々な色の光沢色の発現」とは書いていないのですが、この部分の説明としては、基本物質であるメトキシチオフェン(1)のメトキシ部分のアルキル基をメチルからエチル(2)、プロピル(3)、n-ブチル(4)、イソプロピル(5)、イソブチル(6)、sec-ブチル(7)というように変えていくと形成される色が変化することを表しています。どうしてそのようなことが起きるかという次の図を見るとわかります。

そもそも金属がないにもかかわらず金属色に見えるのは、チオフェン部分が重合することで、共役二重結合が形成されるからです。二重結合が一つ置きにたくさん並ぶと様々な波長の光を吸収することができるようになります。そしてその共役二重結合が吸収する波長は、チオフェンに結合したアルコキシ基のアルキル鎖の長さの影響をうけて変化しているようです。
ただし、アルコキシ基のアルキル基の長さは、直接には共益二重結合には関係しません。ただ、アルキル基の長さが長くなると色が段々濃くなっていき、黒っぽくなっていきます。反射スペクトルのデータがないのでわかりませんが、推測としては吸収される可視光がアルキル基の長さとともに増加していると思われます。そしてその理由については、共役二重結合が長くなって、波長の長い黄色や赤の光まで吸収するようになったと考えられますが、反射スペクトルデータがないので詳しくはわかりません。
研究室の紹介欄では、最後に最近の成果として以下の3つを挙げています。

成果①の光沢色の変化は今ほど説明した通りです。成果②の反射率の増加についてはチオフェンに結合しているメトキシ基の数を増やすことで、光沢強度(反射率)を増加できたとしています。そして成果①と成果②を組み合わせ、色も強度も(ある範囲では)制御ができるとしています。
以上が塚田研究室のHPの紹介内容でした。こうした膜の構造に関してもう少し知りたいと思い、星野先生の文献を調べてみました。大変興味深い内容の報文を見つけましたので、明日ご紹介いたします。